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「シンセミア」
上・下
阿部和重
二〇世紀最後の夏、神の町で何が起きたのか?
著者最高の傑作長編1600枚!!(帯より)
まず、本を開くと、登場人物の紹介がズラリ。私は、こんなに多くの登場人物の紹介が載っている本を初めて見ました。
名前を覚えるのが、不得意な私は、人物紹介が載っている本が、ことのほか好きなのですが、この本の登場者数の多さには、正直、ひいてしまいました(^^;。しかも、上下2巻の長編です。読めるかなぁと心配しましたが、案の定、読み終えるのに、休読?期間をおいたりして、数ヶ月もかかってしまったのでした(^^;。
舞台は、山形県の神町。この町は、実在の町で、しかも、著者の出身地だそうです。ちゃんと著者自身も、重要な?役回りで、登場したりしてるのですから、面白い本ですよね(^^)。
本作は、この町で起きた波瀾万丈なひと夏の事件を描いています。もちろんフィクションでしょうけど、すごい話でした。
なにしろ、登場人物全てが最悪な人間たちなのです。
誰をとっても、とてもまともとは思えません。まあ、人には、表の顔と裏の顔があるわけで、ここの人たちは、その裏の顔が、顕著だと言うことなんでしょう。
結局誰にも感情移入できず、呆れながら読んでいるような状態で、ページをめくる手が、遅々として進まなかったわけです。
でも、後半、神の鉄槌(^^)が下されはじめて、読むスピードが速まりました。顔をしかめながら読んでいる私も、結局は人が不幸になる話の方が好きなのでしょうかねーー(^^;。
そんなもやもやが吹き飛ばされるほど爽快な形で、ラストは訪れます。こんな町は、綺麗さっぱりなくなってしまえ!と思ったのは、私だけではないはずです。
複雑な登場人物の関係や歴史が、すべてうまく書き分けられ、順当な?結末を迎えているのが見事でした。
全ての悪が凝縮したような、神の町のひと夏の物語。読み応えたっぷりでした。 (2004.07.30)