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「臨場」
横山秀夫  




’終身検視官’、死者の人生を救えるかーー。
組織と個人、職務と情、警察小説の圧倒的世界。(帯より)



一筋縄ではいかない面白さを秘めた短編集でした。
主となる人物は一人。終身検視官、倉石。ただ、シリーズ物の主役のように、大きな顔してしゃしゃり出てこない彼の立ち位置に、すごく好感が持てました。
この倉石の鋭い洞察力、これには恐れ入りました。自殺か他殺か、他殺だったら、その犯人は誰かまで、彼には、見えてしまうようです。
短編なのに、その中は、二重三重の非常に濃いストーリーが詰まっていました。

・「眼前の密室」著者の横山さんが、新聞記者出身なので、専門用語もどんどん出てきます。「さつかん」「夜廻り」などなど。この話は最初、専門的すぎて、何がなにやら分からず、理解に苦しみました(^^;。事件のことより、むしろ、新聞記者って、本当に、大変そうだなぁと、感じた話です。
・「鉢植えの女」話が「入れこ」の様になっています。読み終わると、二重の感慨を感じられる奥深い短編。謎解きも、本格的。
・「餞」ふりがながふられていないと読めない難しい漢字です(^^;。切なく、ちょっとほろっと来る結末でした。
・「声」これが一番悲しい話でした。何とも言いようがありません。辛かったです。
・「真夜中の調書」これには、えぇっ!!とびっくりさせられました。こんな事があるんですねぇ。ラストは、倉石が父親にかけた言葉が心に重く残りました。
・「十七年蝉」この作品が、一番、倉石の冴え渡った勘=本能みたいなものを感じました。強面で、煙たがられたりする彼ですが、本当は、気配り、心配りの達人です。(2004.11.02)