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「さまよう刃」
東野圭吾  


裁く権利は誰にあるのか?
読者は彼の行動に同意できるのか、それとも・・・(帯より)



直前に、東野さんの初期の作品である「仮面山荘殺人事件」を読んだところなので、この作品の堂々とした力強い筆致に驚かされました。前作がまだまだ若い青年だとすると、この作品は、自信に満ちあふれた中年と言うところでしょうか・・・(^^)。

内容は、重いです。今現在多発している未成年による犯罪がテーマです。その悪質さに、読むのが何度も辛くなりました。
しかし、実際にも、これに類似した事件は起こっているのだろうし、その犠牲となった人たちの家族の辛い心情は察するにあまりあります。

この頃は、被害者側の人権問題や、心のケアの欠如が取り上げられることも、しばしばあるようです。でも、まだまだ法的には、加害者の保護、更正に重点が置かれていることに変わりはありません。
ただ、近頃、性犯罪者は、犯罪を繰り返すという研究結果も出ているようですので、性犯罪に関しては、新たな動きが出てくるかもしれませんねぇ。

そんな重い内容の中で登場する和佳子のとった行動は、作中の一般市民の願望であり、ひいては、著者自身の思いなのでしょう。
また、読者の心情も、彼女と共にあったのではないでしょうか。

ただ、この本のラストのようなことは有り得ないでしょうね。それは、やっぱり許されないことだと思います。
悪法でも法。そこから逸脱してしまったら、それはただの無法地帯でしかないのですから。
でも、実際に、どうにかしなければならない時期に来ているのではないでしょうか、少年法は・・・。 (2005.08.04)