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「夜の色」
デイヴィッド・リンジー  


物語は、約一年前に最愛の妻を自動車事故で亡くしたヒューストンの画商ハリー・ストランドが、アジア系の美貌の美術品コレクター、マーラと出会い、たちまち恋に落ちる場面から始まる。ところが、じつは妻は殺されていたこと、そして今度は自分の命が狙われていることに気づかされる。それは、数年前に完全に関係が切れたと思っていた国際犯罪組織の黒幕からの殺人予告だった。穏和で実直な中年紳士にしか思われないストランドには、暗い過去があったのだ。ストランドはすべてを打ち明け、マーラと共にヨーロッパを舞台に命がけの逃避行を開始する。しかし、彼女もまた大きな秘密を持っていた・・・。 (表紙折り返しより)



訳者のあとがきにもあるように、何度も前のページに戻り、なるほど〜と、納得しながら読む本です。それほど伏線があちらこちらに張り巡らせてあるのです。
かといって、伏線ばかりで、最初は面白くないのかというと、そんなこともありません。
ちゃんと、物語が着々と進んでゆく楽しさも備えています。
それでいて、あっさりと、重要な事や、正体が明かされていたりして、びっくりすることもありました。
それに、主要なアイテムとなるドローイングの世界もかいま見ることが出来て、とてもリッチな気分にもさせてもらえます。
そして、ラストは、息をするのも忘れるぐらいの緊迫感。あぁ、面白かったとため息つくこと間違い無しの見事な作品でした。

中盤に、主人公のストランドが自分のことを「自分はなんと愚かなのだろう?」と自問するところがありますが、全くその通りだと思いました。でも、それだからこそ、血の通った物語となり得たのかもしれません。
海外物は、ほとんど読まないのですが、これは、とっても面白かったです(^^)。 (2005.11.05)