シネマチェックトップページbook作家別index題名別index     




「古道具 中野商店」
川上弘美  





好きをつきつめると、
からっぽの世界にいってしまうんだな。
学生街の小さな店に集う人たちの、なんともじれったい恋。
世代をこえた友情、どこかあやしい常連たち・・・。
懐かしさと幸福感に満ちた最新長編。 (帯より)



いいですね〜、この感じ。
なんともいえない、この、まったりした、けだるい雰囲気がたまりません。

中野さんが営む古道具屋。
値の張りそうな物はなく、あるのは、いらなくなったこたつや、どこかのおまけの灰皿、松田聖子が宣伝していた古いミシン等々・・・。
そして、そこに集まる人々もまた、特別な人ではなく、普通の人たちが、普通にそれぞれの思いや事情を抱えながら生活しているのです。
なにも、大きな事件が起こるわけではないけれど、普通の人が普通に生活しているだけでも、いろいろなことがあるわけで、これだけのことでも、こうして、物語になってしまう不思議な本です。
主人公のヒトミさんが、その時々に感じる感想が面白くて、はまってしまいました。
最初は、だらだらしたストーリーや人々だなと思っていたのに、読んでいくうちに、だんだんと、他人事ではなく、自分の親戚の話を聞いているような、そんな身近でリアルな感覚に陥りました。
ラストもこんな感じで、さらっと終わってしまうのはちょっと寂しいなと思っていたところ、中野商店の”総集編”みたいな感じの締めくくりで、とても満足して読み終えることが出来ました。
やっぱり、いいわね、川上弘美さんは・・・(^^)。 (2005.11.12)