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「リアルワールド」
桐野夏生  




ねぇ、取り返しのつかないことって
あるんだよ
高校3年の夏休み、世界の終わりが始まった。
(帯より)



取り返しのつかないこと。
この本の中に出てくる高校生は、これをしてしまいます。
私も今まで1回だけ、取り返しの付かないことをしてしまい、未だにそれは心の傷になっています。もしかすると、それは、取り返しの付くことだったかもしれません。でも、その時は、そんなことを考える余裕もなく、絶望の淵に落ちました。
そんなことを考えながら読んでいたら、思いがけなく、ラストは、涙が止まらなくなってしまいました。

4人の女子校生と、一人の男子高校生の視点で書かれていて、その視点が、次々と変わってゆきます。
うわべだけの付き合いから離れたところに、それぞれの心のリアルワールドが広がっていて、その世界の多様さが、まさにリアルでした。
大人でも子供でも、外からうかがい知れるほど、人間って、単純ではないんですよね。
それどころか、心の中には、自分でも、分かっていない部分も、たくさん潜んでいて、その時の状況に応じて、自分でもびっくりするようなことをしてしまったりします。

中盤の彼女たちの行動は、常軌を逸していて、私には、理解できず、ちょっと鼻白んでしまい、距離を置いて読んでいたはずなのに、ラストは、彼女たちの悲しい思い込みに、胸が熱くなりました。
ちょっとした間違いなんて、たくさんたくさんしでかして、そして、生きてゆくのが当たり前なのだけれど、たったひとつの間違いが、たまたま取り返しのつかないことになることだってあるんです。そんな彼女たちが、可哀相でした。 (2006.02.27)