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「ヒストリアン T・U」
  エリザベス・コストヴァ



少女はある夜遅く、父の書斎で一冊の古い「本」を見つけた。竜の挿絵がひとつある以外は何も印刷されていない奇妙な本、そして「不運なるわが後継者へ」という書き出しの宛名のない手紙の束だった。
娘がそれを見つけてしまったことを知った父は、ヨーロッパ各地の史跡へ娘を連れ出した。旅先で父がぽつぽつと語りはじめたのは、彼の学生時代の物語だった。
敬愛していた歴史学の恩師は、ある日「竜の本」にまつわるすべての資料を教え子に託し、突然失踪してしまったという。
教授が最後に口にした言葉、それは・・・。
いったい教授は何を言わんとしていたのか?そして彼はどこへ消えたのか?(表紙折り返しより)





最近多い、ファンタジー大作か・・・?と思っていたら、ちょっと違っていました。
ヒストリアンとは、”歴史家”ということで、ある選ばれた歴史家の人たちが、過去から続く恐怖を追いつめてゆく話です。
その過去から続く恐怖とは・・・?はっきり言ってしまうと、ドラキュラの話です。

しかし、これが、題名どうり、歴史家が主人公なので、史実に忠実で、彼の動向がすごく詳しく書かれてあり、これを読んだだけでも、相当、彼の時代から、それ以降のヨーロッパの歴史や地理、そして、東欧の国の状況に詳しくなってしまいます。私は、地理にも疎いので、裏表紙裏に書いてある地図が、すごく役に立ちました。
ということで、単なるファンタジーものとして読むには、堅苦しい本でしたが、こういう方面の話が好きな私には、割と面白くて、スラスラと読むことが出来ました。

時代は、大きく分けて、3世代が絡んできます。まず、物語の最初に、1972年に、父の書斎で、竜の本を見つけてしまう娘の話からはじまり、その父親が大学院生時代に図書室でその本と出会う話、そして、父親の恩師であるロッシの研究までさかのぼってゆきます。それらの話が、入り乱れて進んでゆくので、その状況をよく理解していないと、何がなにやら、分からなくなってしまいそうでした。しかも、最初のうちは、すごく出し惜しみしてくれるんですよねーーー(^^;。

それでも、時として現れるドラキュラの僕(しもべ)たちに、人々が襲われる事もあったりして、そのドキドキハラハラ感で、飽きることはありません。でも、どうして、主要人物は、狙われなくて、余り大事でないような、周りの人ばかりが狙われるのか??ちょっと都合がいい話かもしれません(^^)。
しかも、1回噛まれただけでは、吸血鬼にはならないというのも、こちらにとって有利ですね〜(^^)。

それとは別に、もっとハラハラしたのが、父親の時代の各国の国情です。とても閉鎖的な時期だったようで、こちらの方が、不気味で、研究のために核心の部分に向かうときの駆け引きなど、実は、ドラキュラよりも怖かったかもしれません。

この本は、処女作にして、全米ベストセラーになり、しかも、執筆中にホップウッド賞を受賞したということです。執筆中にって事は、何かの雑誌に連載でもしていたのでしょうか??
映画化の話もあるようで、面白いかもしれませんね〜〜(^^)。 (2006.09.08)