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「風に舞いあがるビニールシート」
  森 絵都



愛しぬくことも愛されぬくこともできなかった日々を、
今日も思っている。
大切な何かのために懸命に生きる人たちの、6つの物語 (帯より)



しっかりと内容の濃い短編が6作。
それぞれ全く違った味わいがあるのに、ひとつひとつが、心に響きました。
短編なのに、長編小説のような重みを持った作品たちです。
表題作の「風に舞いあがるビニールシート」は、第135回直木賞の受賞作です。

「器を探して」クリスマス・イブに、急に出張を命じられた弥生は、恋人との約束も果たせずに・・・。(ラストが唐突だけど、自分が楽でいられることが、一番大切でもあるのかも。)

「犬の散歩」主婦、恵利子は、何故、古酒場に勤めているのか?(色々と、彼女の気持ちも、行動も分かるけど、何故、夜の酒場なのかは、やっぱり納得できないかも。でも、周りの優しさと、理解に心温まります。)

「守護神」夜間大学に通うフリーター、祐介は、代筆の達人に、レポートの代筆を頼もうとするが・・・。(ちょっと、あなた、懲りすぎなのよ〜〜(^^)。でも、頑張れって言われると、うれしいよね。)

「鐘の音」25年ぶりに元の職場に向かった潔は・・・。(仏像の修復師。全く縁のない世界だけれど、なんでも、驕りや、思い込みは、禁物だと言うこと。ラストにホッと肩の力が抜けました。)

「ジェネレーションX」40歳近くの野田が、「新人類」の石津と共に、車で仕事先に向かうが・・・。(これは、文句なく面白かったです。石津の傍若無人の携帯電話に迷惑しつつも、だんだんと電話の掛け合いに心を奪われてゆく野田の様子が、ユーモラス。ラストもなかなか、味わい深い(^^)。)

「風に舞いあがるビニールシート」国連職員の里佳は、魅力的な上司と職場結婚するが・・・。(お風呂で読んでいたのですが、ラストは、号泣でした(T_T)。いくら愛していても、相手の信念を変えることは出来ないし、無理矢理変えさせても、それでは幸せにはなれないのでしょう。どうしようもない事って、あるんですよねー(T_T)。) (2007.02.12)