シネマチェックトップページbook作家別index題名別index     



「幻の女」
  香納諒一


五年前に愛を交わしながらも突然姿を消した女、瞭子と偶然の再会を果たした弁護士の栖本誠次は、翌朝、彼女の死を知った。事務所の留守電には、相談したいことがあるとの短い伝言が残されていた。手がかりを求めて彼女の故郷を訪ねると、そこには別の人間の少女時代が・・・。愛した女は誰だったのか。時を遡る執拗な調査は、やがて二十年前の産業誘致をめぐる巨大な陰謀と、政財界をも巻き込んで蠢く裏社会の不気味な構図に行き当たる。謎とサスペンスの中に孤独で真摯な愛の行方を描ききった第52回日本推理作家協会賞受賞の傑作、待望の文庫化! (裏表紙より)



ものすごく読み応えのあるハードボイルド小説です。
5年ぶりに再会した昔の恋人の死。彼女には、色々聞きたいことも、そして、まだ愛する思いも残っていたのに・・・。
少々くたびれた弁護士が、彼女の死の謎、そして、彼女自身の謎に、迫ってゆきます。
彼にも、そして、彼女にもある、それぞれの苦い過去。彼は、ただ彼女のためだけに、大きな陰謀を暴き始めるが・・・。

主人公の栖本弁護士が、かっこよすぎないところがいいですね。人間としての弱味をちゃんと持っているからこそ、共感しながら読んでゆけました。

文庫本でも700ページ余りある大長編です。私も、読み終わるまで、だいぶ時間が掛かってしまったのですが、著者のインタビューを読むと、実は、この「幻の女」の前に、2作の「幻の女」が、幻と消えたそうです。それらは、更に読み応えがある(=長い(^^;)話だったそうで、こちらを完成作とされたことに、ちょっとばかり感謝してしまいました(^^)。
時間があるときに、じっくりと読みたい本です。特に男性にお薦め(^^)。 (2007.05.10)