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「八日目の蝉」
  角田光代


逃げて、 逃げて、 逃げのびたら、
私はあなたの 母になれるだろうかーーー
理性をゆるがす愛があり罪にもそそぐ光があった
角田光代が全力で挑む長編サスペンス (帯より)



最初は、主人公、希和子に感情移入できず、なかなか読み進められなかったのですが、途中から惹き付けられました。
あまりにも短絡的だけれど、どうしても自分自身を止めることが出来なかった誘拐という犯罪を犯した希和子。
どうしてこんなにも理性がないのだろうと、苦々しい思いではじめは読んでいましたが、彼女が子供を思う気持ちと深い愛情が感じられるようになってからは、違う目で彼女を見るようになりました。

女は、子供を産んだ瞬間に母親になるのではなく、子供の成長とともに、徐々に母親になってゆくんだなと、感じられる話です。子供のためにならば、他の楽しみをすべて犠牲に出来る強さは、普通の母親よりも、大きかったかもしれません。

でも、彼女の行為によって、母親になり損ねてしまった実の母親。そして、愛情の対象をどこに向けたらいいのか悩む子供にとっては、やはり、重い行為だったことに変わりはありません。多くの人の人生を狂わせてしまった重い犯罪です。

誰にも過ちはあることで、その過ちから立ち直るのは、大変なことでしょう。
でも、「もし、あの時・・・」という考えに縛られていても、なにも生まれることはないのです。
それよりも、新しくやってくる未来のために生きることが、やはり、重要ですね。

さりげなくすれ違う二人の女性の強さに、ホッとさせられました。 (2007.10.31)