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「クワイエットルームにようこそ」
  松尾スズキ
















恋人との大喧嘩の果て、薬の過剰摂取(オーバードーズ)で精神病院の閉鎖病棟に担ぎ込まれた明日香。そこで拒食・過食・虚言・自傷など、事情を抱えた患者やナースと出会う。普通と特別、正常と異常・・・境界線をさまよう明日香がたどり着いた場所はどこか?悲しくて笑うしかない、絶望から再生への14日間を描いた、第134回芥川賞候補作。(裏表紙より)




最初から壮絶シーンで始まるこの小説。そもそも、クワイエットルームとは、精神病院での隔離室を意味するそうで、そう考えると、この冒頭シーンも、納得できるというものでしょう(^^)。
この小説、映画化されて、主演は、内田有紀だそうで、彼女も、思い切った役に挑戦しましたね〜。でも、そう思いながら読んでいると、彼女がどんどん明日香に思えてきてしまうのでした。まだ映画館で上映してるのかしら〜〜?見ればよかったな。

薬をアテにお酒を飲んで、病院に担ぎ込まれた明日香。
そんな彼女が気がついたところから、一人称で、書かれています。大変な状況なのに、語り口は、軽やかで、面白くて、冷静です。だから、すいすいと読めてしまいました。
私にとって、まだ未知の世界である精神病院の内部が分かって、相当に面白かったです。

明日香以外の入院患者も、入院するぐらいなのですから、世間から逸脱した人たちばかりです。
そんな人たちを一人ずつ取り上げて、ストーリーは、進んでゆきます。

明日香がそうであるように、彼女たちの行動も、何かしらの理由があってのことなのでしょう。何が、そこまで彼女たちを追い詰めたのか。
全く別世界であった精神病院も、彼女たちの姿を見ると、明日香のように、一歩踏み出すだけで、案外近いところにあるのかもしれないですねぇ。

長編小説といっても、短くて、読みやすかったのですが、なんだか物足りないですね。もっと読んでいたいと思ってしまいました。 (2007.11.12)