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「リヴァイアサン号殺人事件」
  ポリス・アクーニン




「欠けている物は何もない優雅なグランド・ミステリー」高村薫(作家)
一九世紀末パリ、大富豪が怪死を遂げた。唯一の手がかりである「金のクジラのバッジ」が指すのは、イギリスからインドへ向かう豪華客船リヴァイアサン号。見え隠れする「消えた秘宝」の謎と、それぞれ曰くありげな乗客たち。ーーこのなかに犯人がいる!日本赴任の途上に船に乗り合わせたロシアの若き外交官ファンドーリンが、快刀乱麻の推理で事件に挑む。 (表紙折り返しより)

ロシアのベストセラー作家、ポリス・アクーニンの「ファンドーリンの捜査ファイル」シリーズの2番目のお話です。今回邦訳されたのは、この作品と、3話目の「アキレス将軍暗殺事件」だったそうです。
ロシアで、大ヒットした作品らしいので、それならと思って、読んでみました。

時は、19世紀末。場所は、豪華客船リヴァイアサン号の一等船室。ゴーシュ警部が追う、パリで起こった大量殺人事件の犯人は、この限られた空間にいる!
というわけで、犯人捜しが始まります。
そこには、怪しげな人々が集うサロンがあり・・・。

ちょっとクラシックな正統派推理小説という雰囲気で、アガサ・クリスティみたいだなと思いつつ読みました。
豪華客船に乗った一等船客たちが優雅にゆったりと船旅を楽しむ中、警部と、この本の主人公、ファンドーリンが、事件の推理を進めてゆきます。

その乗客の中には、なんと日本人も乗っていて、事件の重要な登場人物となっています。
西洋人の中の東洋人ということで、西欧における当時の日本人の存在がどうゆうものだったのかが、分かって興味深いです。
また、著者は、日本文学研究者ということで、日本人の描き方は、なかなかすばらしいです。本当にロシアの人が書いたの?と思うほど、日本人の心の内面まで描かれています。そして、俳句まで作ってしまうのですから、すごいです(^^)。ペンネームのアクーニンも「悪人」から取ったそうなので、筋金入りなんですね。

狭い環境の中での犯人捜しなので、途中で、うすうす犯人が分かってしまいましたが、最後まで目が離せない展開でした。
そんなわけで楽しんで読むことが出来たのですが、ちょっと物足りなかったのが、主人公ファンドーリンの描き方が、控えめだったことです。おそらく魅力的であろう彼のことをもっと詳しく描いてくれていたら、もっと読むスピードが上がったと思うのですが(^^)。 (2007,12,07)