「赤朽葉家の伝説」
桜庭一樹
祖母。母。わたし。
だんだんの世界の女たち
鳥取の旧家に生きる三代の女たち、そして彼女たちを取り巻く
製鉄一族の姿を描き上げた渾身の雄編
「少女には向かない職業」の俊英、ついに本領発揮!
(帯より)
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旧家で生きた三代にわたる女たちの物語です。
こういう、ストーリー性の高い作品は大好きなので、とても、楽しめました。
しかも、この赤朽葉家の女たちは、題名についている「伝説」という言葉通りのミステリアスな人物たちで、本人たちは、一生懸命生きているわけですが、思わず、笑ってしまうようなところも多々ありました。
物語の語り部は、三代目の瞳子。
はじまりは、1953年の瞳子の祖母、万葉が10歳の時です。
捨て子だった万葉は、字を読むことも書くことも出来ないという、不思議な女の子。顔や姿も、その地域に住む人々とは違う、いわゆる、”山の民”系。さらに、彼女は、千里眼だったのでした。
この段階で、強烈に、この本にのめり込んでしまいました。
そのほかにも、万葉の姑となるタツ。万葉の娘の毛毬。毛毬の友達のチョーコ。毛毬の腹違いの妹、百夜。など、個性あふれる女性たちが、これでもかというほどに登場します。
そして、もう一つの大きな特徴が、彼らの名前。毛毬とか、泪とか、孤独とか、変わった名前がつけられていて、それがまた、彼らの性格や、容姿に合っているので、たくさんの人物が登場してくるわりに、とても分かりやすくて、読みやすく、また、理解しやすいのがよかったです。
こうして、三世代の流れを一気に読んでゆくと、その時々の社会の状態や、発展の道筋がよく分かって、まるで、箱庭に出来た日本を空から神になってのぞいているような気さえしてしまいました。
こうして、大局的に、時代を見据えると、その時々の、人の悩みや、人と違う行動など、たわいもなく、小さく感じられてしまいます。いろいろなことがあっても、結局、人は、その時を乗り越えたり、乗り越えられなかったりしながら、それなりに、大人になり、時代は進んでいくものなんですね〜〜。
最終章では、瞳子が万葉の謎の言葉を解明しようと奔走します。いったい万葉の犯した罪とは・・・?
過去の赤朽葉家の女性たちに比べると、ごくごく普通の女の子である瞳子。時代は、人間の個性を薄めてしまったのでしょうかねぇ。
物語の中で、最初から最後まで出てくる物で、とても気になったのが、「ぷくぷく茶」なるものです。
思わず、ネットで調べてしまいましたが、これは、著者の創造したお茶なのでしょうか。沖縄に、同じ名前のお茶があるようですが、お豆の入ったこの小説のぷくぷく茶とは、ちょっと違うような気がします。
それとも、鳥取には、本当に、こんな感じのお茶があるのでしょうか。あったら、是非、飲んでみたいです(^^)。
(2007,12,26)
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