「星へ落ちる」
金原ひとみ
いつか、私は彼に墜落したーーー。
一つの愛から始まった三つの絶望と
一人の愛から始まった三人の絶望の物語。
(帯より)
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5編が収録された短編集・・・と思っていたら、一つの恋愛話を多方向から見た、繋がった物語でした。
一つのカップルがあって、その両方に、元恋人がいるという設定。
それぞれが、皆、不安定で、ぎりぎりのところで生きています。
彼女。彼の元彼。彼女。彼女の元彼。彼女。と、こんな具合で、話が進んでゆきます。面白いのは、肝心の”彼”の話がないところ。だからこそ、不安で、落ち着かない気持ちが持続するのでしょうか。
何事も、一方向からの話だけでは、物事は見えてこないものですが、こうして三方向から見てみると、どうしてこんなダメ男を・・・とか、何で早く片をつけないの・・・?とか、そんなにガマンしなくてもいいのに・・・とかいう、単純な感想は、鳴りを潜めてしまいます。彼らの気持ちがそれぞれ、分かってしまう、そんな気がしました。
金原ひとみさんの本は、芥川賞受賞作の「蛇にピアス」以来ですが、あの時のギラギラしたイメージとは違う、成熟さを感じる本でした。
(2008,01,22)
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