「マザコン」
角田光代
母と子の関係は唯一のもの。
誰もがマザコンなのかもしれない。
(裏表紙より)
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八個の短編から成る作品集です。
正直言って、最初の二編は何を言いたいのか分かりませんでした。でも、三つめの作品「鳥を運ぶ」を読んでいて、あ、そうだなと、感じるものがあり、それ以降は、なんだか素直に心の中に浸みわたってきました。
実は、私、うかつなことに、本の題名を失念していたのです。「マザコン」。まさにこの本は、いろいろな母と子供の関係を書き表していたのです。
そう思って、もう一度読み返してみると、胸が痛くなるほど感情が高ぶりました。いったい母親って何なんだろう。
一生懸命子供を育てるのが母親。でもそれ以前に、子供であったり、青春時代があったり、恋愛したり、嫉妬したり、修羅場があったり・・・。自分たちがしてきたたことを母親も同じようにしていたのかもしれない。いや、当然してきたはずなんですね〜。
それを、子供達は、自分たちが、いい大人になって初めて気がついて、うろたえたりして、なんだかバカみたい。
一方、母は、夫がいなくなり、子供が手を離れたら、また母の、母だけの、そして、母のための人生が始まる。
そうは頭で分かっていても、なかなか受け入れるのは、大変かも。
そして、自分だって、子供からは、そう思われながら歳を取ってゆくわけなのよね・・・。
「空を蹴る」出会ったばかりの女と熱海に行って・・・。
「雨をわたる」母が一人でフィリピンに移住して・・・。
「鳥を運ぶ」入院した母の変わりに六羽の鳥を世話することになり・・・。
「パセリと温泉」入院した母の妄想に翻弄させられる私。でも、いったいどっちが妄想だったのか?
「マザコン」家庭の中にしか存在していなかった母親が、父の死語、4ヶ月で再婚話を始めたら・・・。
「ふたり暮らし」父が出て行き、妹も出て行き、母と二人残った私は・・・。
「クライ、ベイビイ、クライ」昔家を出て行った母から毎月届く宅配便。全てに行き詰まった僕は、母に電話を掛ける決心をする・・・。
「初恋ツアー」母親の結婚前の恋人と会うための旅。これはちょっと勘弁して欲しいなぁ(^^;。
(2008,02,23)
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