「九つの、物語」
橋本紡
もう1度取り戻せるだろうか。
失ってしまった、大切な人を。
見えなくなった、自分の心を。
繊細で壊れやすい心に響く、9つの物語。
(帯より)
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題名通り、九つの章に分かれて物語が収録されていますが、それぞれが続き物になっているので読みやすかったです。
章題名は、「る紅新草」、「待つ」、「蒲団」、「あぢさゐ」、「ノラや」、「山椒魚」・・・。そう、有名小説の題名です。
ヒロインの女の子、藤村ゆきなが読書好きで、これらの本を読んで、その内容や、文章に、インスパイアされたり、また、兄や、彼、友達に影響を受けながら成長してゆきます。
彼女の前に、ある日突然現れた兄、藤村禎文。
彼は、優しくて、本好きで、料理が得意で、そして女たらし?!
彼の作ってくれる料理は、とても簡単そうだし、おいしそうで、すぐに作ってみたくなりました。
兄は、どうして急に現れたのか。
それは、この本の底に流れる悲しみと、憤り。そして生きていくことのすばらしさ。それらのことを思い出させ、そして教えてくれるためだったのでしょう。
危うい状態の妹を、きっとほっておけなかったのでしょうね。優しいお兄ちゃんです。
題名になっている名作の中で、大昔読んだ覚えたあったのが「蒲団」「山椒魚」だけ。しかもほとんど覚えていませんでした。これらを読んでいたら、もっと違った思いを感じたかもしれませんが、これらを知らなくても、十分楽しめました。逆に、この本を読んだことで、これらの名作を読んでみても楽しいかもしれませんね。
昔の名作本に触れることが出来、料理も作りたくなり、そして、生きることの意味を考えさせてくれる、とても贅沢な本でした。
(2008,06,26)
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