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「メモリー・キーパーの娘」
キム・エドワーズ  



誰にでも「秘密」はある。
でも、それが大きく、重すぎてしまったらーーー
ひとりでは支えきれない秘密を
ゆっくり溶かしてくれる「愛」の物語がここにある。ーー高見恭子 (帯より)



若く、情熱溢れる医師デイヴィッドと、美しい妻に授けられた赤ん坊は、双子で、そのうち一人は、ダウン症だった。
自ら我が子を取り上げたデイヴィッドは、とっさの判断で、ダウン症の子を施設に預け、妻には、死産だったと告げる。
その瞬間から、彼らの苦悩は始まった・・・。
この物語は、彼ら夫婦と、子供達、そして、一人の女性の、25年にわたる葛藤の物語です。

夫婦の初々しい出会いから、新婚生活、そして、出産。その後の「障害児を育てるということ」に対する苦悩と、そのとらえ方。いろいろと考えさせられる話でした。

我が子を取り上げたデイヴィッドの苦悩は、どれほど大きかったことでしょう。彼の生い立ちを考えると、彼の行動も分からなくはないけれど、その後の彼の苦悩を考えると、彼の最大の誤算は、自分の心の中にあったのかもしれないと、思えてきます。
その後、いくらでも、妻に告白する機会があったでしょうに、と思うと、彼のためにも、そして妻のためにも、残念です。

一方、捨てられた双子の片割れ、フィービを取り巻く環境は、常に良好でした。一口にダウン症と言っても、症状は、いろいろのようで、キャロラインの愛情にくるまれて、フィービは、幸せに育ちます。

デイヴィッドの苦悩の選択そのものは、間違ったことでしたが、その間違いがあったからこそ、フィービの幸せがあり、キャロラインの幸せもあったようにも感じます。やはり、愛情を持って、共に、育て、育つこと、これは、人間にとって、大切なことですね。

映画化が決定したらしいですが、キャストは、どうなるのでしょう。
デイヴィッドにエドワード・ノートン。ノラにナオミ・ワッツ。キャロラインにレニー・ゼルウェガーなんて、いかがでしょうか(^^)。


しばらく短編を読む機会が多かったので、こうしたどっしりとした読み応えのある本は、いかにも、小説を読んでいるという感覚があって、うれしく、一気に読んでしまいました。 (2008,06,28)