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「Xωρα(ホーラ)―死都」
篠田節子  



















不倫の関係を続ける亜紀と聡史はエーゲ海の小島を訪れるが、次々と不可思議な出来事に襲われる。それは神のなせるものなのか── (出版社 / 著者からの内容紹介より)



篠田さんの作品は、好きで、十数冊読んでいるのですが、この作品も、面白かったです。
この題名「Xωρα(ホーラ)―死都」=ホラーと、単純に考えていましたが、ちょっと違っていました。確かにホラーチックではありましたが、ただのホラーではなく、歴史の重みを感じるものでした。

不倫関係の男女が、アテネへとむかうのですが、そこで、不思議なことが次々と起こります。
これは、果たして、何かの力によって、引き寄せられたのか。それとも、ただ単に、偶然が重なっただけのことなのか。

不倫旅行と言っても、普通の不倫小説のように、ドロドロした感じはありません。
逆に、年代を重ねた男女が、自分たちの関係を醒めた目で見ている感じがして、男女の奥深さや、切なさのようなものも感じました。

男が誕生日のプレゼントとして、女に送ったヴァイオリン。そのヴァイオリンによって、導かれるように、観光時期の終わった小島に渡り、そして、かつて繁栄し、今はもう廃墟になったホーラという名前の高台にあったといわれる都市に向かいます。
そこで、二人が目にしたものは・・・。

運命なのか、偶然なのか、神の導きなのか、悪魔のいたずらか・・・。

二人を翻弄した出来事には、やはり因縁めいたことを感じます。
人々の強い意志や、怨念のこもった物や土地には、安易に近づかない方がいいのかもしれません。 (2008,07,25)