「ジーン・ワルツ」
海堂尊
産婦人科医・理恵――人呼んでクール・ウィッチ。医者がヒトの生命を操ることは許されているのか? 現役医師作家が挑む、現代日本最大の医療問題。『チーム・バチスタの栄光』を超える強烈なキャラクターとスリリングな展開に目が離せません!
(出版社 / 著者からの内容紹介より)
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「チーム・バチスタの栄光」以来、現役医師である海堂さんが発表し続けている医療ミステリーです。
今回は、ある人物と、病院名が以前のシリーズの名残として出てきますが、それ以外は、新しいキャラクターです。
本作の主人公は、「クール・ウィッチ」と呼ばれる、頭脳明晰な産婦人科医曽根崎理恵。
今回取り上げる問題は、産婦人科医療。
今現実に問題になっていることが、描かれているので、タイムリーで、且つ、分かりやすかったです。
なるほど、こういう事になっていたのかと、驚くこともありました。
医師としての海堂さんの憤りも感じることのできる物語になっています。
曽根崎理恵は、気が強く、弁舌さわやかで、憎まれ役の教授をやりこめる所など、小気味いいです。
一方、彼女の上司であり、先輩であり、恋人?でもある清川のキャラクターは、本当はやり手なのでしょうが、ちょっといい加減なところもあって、つかみ所のない感じがしました。ひょっとしたら彼がまた、新しいキャラとして、話を広げていくのかもしれません。
メインストーリーは、理恵が働く閉院間近のマリアクリニックの患者たちです。
それぞれ事情を抱えた妊婦さんが5人。
その事情はあまり深くは描かれていませんが、彼らと、そして医師の理恵には、何かしらの謎めいた感覚がつきまとい、それが終盤になって、一気に解き明かされます。
その他にも、医療の矛盾点など、著者の言いたいことが、たくさん書かれていて、面白かったのですが、ラストの一部分が、納得できませんでした。
そんなこと、許されることではないし、今では一般によく知られているような検査をしたら、結果は、すぐ分かってしまうはず。今まで苦労に苦労を重ねてきたご夫婦の事を考えたら、憤りさえ感じてしまいました。
それから異常児の生まれる確率が、異常に高いのも不自然で、最初、何かの冗談かと思ってしまいました(^^;。
とはいえ、産科医療の惨状は、ひどいもので、これでは、子供を安心して産めず、ますます少子化になるのは、目に見えているわけで、早急に、どうにかして欲しいものですねぇ。
(2008,07,30)
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