「虚夢」
薬丸岳
娘を殺した犯人が
目の前を歩いている!
愛娘を奪い去った通り魔事件の犯人は「心神喪失」で罪に問われなかった。
運命を大きく狂わされた夫婦はついに離婚するが、事件から4年後、
元妻が街で偶然すれ違ったのは、忘れもしない「あの男」だった。
「天使のナイフ」の江戸川乱歩賞作家が衝撃の展開で描く感動作!
(帯より)
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「天使のナイフ」で、少年犯罪を世に問うた著者が、今回は、”心神喪失”をテーマに描いています。
最近特に、この”心神喪失”による犯罪が増え、被害者ならずとも、ニュースを見ていて、疑問に感じることが多々ありました。
そんな思いを、著者が、小説にして、まとめ上げてくれたように感じました。
「殺人を犯す段階で、すべての人間は異常な精神状態にあるのではないか。」と書かれた箇所がありましたが、本当に、そう思います。
普通の精神状態で、殺人を犯した人など、少ないでしょうし、もしいたとしても、それはそれで、怖いことですよねーーー。
逮捕後行われる精神鑑定は、専門家である精神科医によっても違う判断が下されたり、ひどい時は、鑑定そのものを無視する判決さえあります。
そもそも他人の精神構造を知ろうということ事態、無理があるのではと、思えてきます。
でも実際に、”心神喪失”と鑑定された結果、殺人を犯した人間が、数年で、普通の生活に戻っている事も事実なわけで、どこか根底が間違っているような気がしてなりません。
私でも、そんなことを感じるのに、実際に被害に遭われた方は、なおさら納得できないことでしょうねぇ。
重いですが、興味のある話で、文体も読みやすかったです。また、視線が、一方向に片寄っていないことも、良かったと思います。
(2008,08,17)
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