「みんな、同じ屋根の下」
サンセット老人ホームの愉快な仲間たち
リチャード・B・ライト
カナダにある老人ホームを舞台にした物語です。
物語と言っても、劇的なストーリーがあるわけではありません。
どこの国のどこの町にもあるような老人ホームに住む、どこにでもいるような老人たちのお話です。
長い年月を生き抜いてきて、身体は衰え、病がちになってしまった彼らですが、それまでに、いろいろな体験を積み、様々な知識を蓄えてきているのです。
その心の中は、さぞ、平穏で、豊かなものなのでしょう。
・・・と思ったら、大間違いです!(^^)。
彼らは、年とともに、ひがみやすく頑固になり、他に楽しみがないせいか、人への嫌がらせを楽しみにしていたり、始終不平不満を垂れ流したり、はたまた、被害妄想に陥ったり・・・。
あぁ、そうなんだ。年を取っても、人間が丸くなったり、善人になるわけではなく、かえって、その人のいやな面が強調されてしまうんだ。と、なんだか、安心したような、親近感があるような。
これが、まさに”生きている”人間なんだなぁと、しみじみし思ってしまいました。
とはいえ、けして、老人のいやな面を書き連ねた本ではありません。
そんな、いやな面をたくさん持った彼らを、丸ごとそのまま、見つめている作者の優しさと温かしさが感じられる本なのでした。
そして、彼ら老人の素直な感じ方や、反応に、いつしかクスッと笑ったり、所々に描かれる、彼らの若かりし頃の姿を思い描いて、感慨にふけるのでした。
(2009,03,04)
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