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「IN」
   
桐野夏生



彼は、小説に命を懸ける、と何度も言った。小説は悪魔ですか。それとも、作家が悪魔ですか?恋愛の「抹殺」を書く小説家の荒涼たる魂の遍路。 (「BOOK」データベースより)




桐野夏生さんのミステリー小説は大好きで、よく読みます。
でも彼女には、ミステリー以外の作品もあるので、この小説は、そちらの方の、例えば、小説家の恋愛のことを書いた本だと思って、読み進みました。
桐野さんとしては、ちょっと凡庸かな〜なんて思いつつ・・・。
でも、とんでもなかったですね。
後半は、ページを繰る手を止めることが出来ないぐらい引き込まれました。
そして、終盤は、ホラー小説のように、怖ろしくも感じられたのです。

本を書くこと。
小説を執筆すること。
それは、どういう事なのか。

このことは、きっと桐野さん自身も、感じ、考えながら、これまで仕事をしてきたのではないかな〜と、思いました。

小説と真実との違い。
現実を書き留めることによって、それは、真実ではなくなり、フィクションになる・・・。

そのことを、この本の中で、まざまざと感じることが出来ました。

私小説だからと言って、それが真実とは限らず、
その人それぞれの立場によって、また、真実も、異なる・・・。

小説は、様々な人を呼び寄せ、
また、変化してゆくものなのでしょうか。

それにしても、作家と編集者の関係って、リアルで怖ろしい(^^;。
特に、新人作家にとっては、どんな編集者に当たるかによって、
生きもすれば、死にもするようで、そこら辺は、バクチのようですねぇ(^^;。
本当に、実力があれば、どんなところからでも、はい上がれるのでしょうけれど・・・・。

それにしても、「IN」=「淫」と思っていた私は、うかつにも「OUT」の裏返しでもあることに、読み終わってから気がついたのでした・・・(^^;。
内側に潜む恐怖・・・これって結構怖いです(^^;。 (2010,04,02)