「薄暮」
篠田節子
田園を美しく輝かせる一瞬の光が、雪国に厳しい冬の訪れを告げる――。封印されていた一枚の絵が脚光を浴びた時、「閉じられた天才画家」は妻の元を離れ、郷土の人々の欲望と疑心がうごめき始める。著者の新境地を示す傑作長編!
(内容紹介より)
|
篠田さんの小説は、どれも”しっかり”した、安定感があって好きです。
この小説も、その通りの作品でした。
地方に埋もれた画家の話です。
その作品が、ひょんな事からマスコミに取り上げられて、注目されるようになり、
地域興しにもなってゆくのは、現実にありそうな話です。
ただ、途中から雲行きが怪しくなって・・・。
閉塞された画家が、やっと世間に認められるようになると言うのに、
一緒に苦労してきた妻の言動が、怪しくなり始めるのです。
苦労した彼女に感情移入できそうだったのに、
急に彼女の気持ちが分からなくなってしまいました。
どうして?何故??
画集を出版しようと奔走する主人公・橘ともども、途方に暮れる思いでした。
その後の展開も、なかなかスッキリとせず、
鬱々とした状態が続いて、読みながら、少々嫌気さえ差してきてしまいます。
しかし、終盤になって、事態が動き始めます。
そしてラスト・・・。
全てが明らかになるところは、うむむ〜〜という感じで、とても感慨深いものを感じました。
絵画や、骨董の世界とは無縁なので、分からないのですが、
それでも、何となく、分かるような、でもやっぱり釈然としないような・・・。
まあ、素人が手出しをするもんじゃないって事は、肝に銘じましたけど(^^)。
でも、人の心って言うのは、本当に繊細で、
他人から推し量ることは、難しいですね〜。
よかれと思ってやったことでも、その存在そのものが、ネックだったり・・・。
結構重い話しで、途中は、鬱々としてしまいましたが、すべて読み終わると、大きな充実感がありました。
また、いろいろな登場人物の心の機微が細やかに描かれているのは、さすがです。
(2010,04,28)
|
|
|
|