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「身の上話」
   
佐藤正午   

 
この主人公の流され方に、自分は違うと言い切れますか。人間・人生の不可思議をとことん突きつめる、著者の新たな代表作の誕生。 (「BOOK」データベースより)



面白かったです。

冒頭は、自分の妻の話を、妻から聞いたままに話す男の語りで始まります。

この体裁は、最後まで続くのですが、
それが、”妻”から聞いた話の代弁なので、彼女の真意や、正確な行動と一致するかどうかは、不明のままです。

それはまるで、犯人の供述を刑事が書き取りしたような感じです。
ただ、その語り部が、夫なので、文章には、好意的な、優しさも感じられるような気がします。

平凡なOLだった彼女に、いったい何が起こったのか・・・?
最初は、”魔が差した”としか言いようのない行動でした。

そして、ある幸運・・・というより、実は、とても不幸な、ある奇跡のような出来事が彼女に起きて・・・。

その後、彼女の人生は、坂道を転がりだしてしまうのでした。
もし、自分が彼女の立場だったなら、もっとうまく立ち回れたでしょうか。

やはり、平常心を失って、何か、大きな過ちをしたり、何事かに巻き込まれたり、するのかもしれません。

キーワードは”宝くじ”。

そして、衝撃のラストに突き進むのですが・・・。

でも、このモヤモヤ感は、何だろう??
何か、もっと深い裏が隠されていたのが、見えたようで、見えない。

所々にちりばめられる、小さな疑問符が積み重なりました。

これらは偶然なのか??
それとも、ひょっとしてこれは・・・??

むむむ、やっぱり、佐藤正午は、侮れません。 (2010,08,05)