「暗いところで待ち合わせ」
乙一
視力をなくし、一人静かに暮らすミチル。職場の人間関係に悩むアキヒロ。駅のホームで起きた殺人事件が、寂しい二人を引き合わせた。犯人として追われるアキヒロは、ミチルの家に逃げ込み、居間の隅にうずくまる。他人の気配に怯えるミチルは、身を守るため、知らない振りをしようと決める。奇妙な同棲生活が始まったーーー。書き下ろし小説。 (裏表紙より)
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大人になってからの事故で、失明したミチル。
父と二人きりで生きてきた彼女が、父を亡くして、暗闇の世界で、たった一人残されてしまう・・・。
その恐ろしさと、寂しさと、そして自分の将来への達観とが、リアルに感じられました。
家の中にいる安心感と、外の世界の恐ろしさ。
たった一枚のドアの内外なのに、この違いは、ミチルにとっては、無限の大きさに感じられたに違いありません。
視覚障害者の方が、白い杖一本で、外に出て行くことの偉大さを、改めて感じました。
私なんて、目がちゃんと見えていても、今自分がどこにいるのか、分からなくなることもあるというのに・・・(^^;。
もう一人の登場人物は、人との関わりが苦手で、壁を作って生きてきたばかりに、
抜き差しならない状況に追い込まれてしまったアキヒロ。
アキヒロが、ミチルの家に忍び込むところからこの物語が始まります。
前半は、二人の気持ちが交互に描かれていて、少々地味で、まどろっこしいし、
こんな状況、あり得ないように感じてしまいました。
でも、後半は、一気に話が進みます。
二人の内向きな心が、ほんの少しずつ、ほぐされてゆくのが、心地よかったです。
(2011,02,05)
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