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「末裔」
絲山秋子

家族であることとはいったい何なのか。父や伯父の持っていた教養、亡き妻との日々、全ては豊かな家族の思い出。懐かしさが胸にしみる著者初の長篇家族小説。 (「BOOK」データベースより)



会社から、家に帰ってくると、ドアの鍵穴がなくなっていた・・・!?
という話です。
えっ?!ですよね(^^)。
この物語の主人公、省三でなくても、わけ分からない事態です。
ドアはあるのに、鍵穴がないって?!
それじゃ、いくら鍵を持っていても、しょうがないじゃん!!

そんな、ホラーチックな出だしで始まるこの小説。
まずは、つかみは、バッチリでした。

その後も、主人公である、役所に勤める50代の寂しいオヤジが、
いろいろな不思議な事態に陥って、かつ、それらに導かれるようにして、行動し始めます。

不可思議な状態なのに、何故か、その状況に順応してしまう不思議。

これが、運命・・・ということでしょうか。

祖先が、ふがいない”末裔”に力を授け、にっちもさっちもいかなくなっていた”家族”を再生へと導きます。

あからさまではないのに、何となく、大きな力を感じ、また、大きな愛も感じられる物語でした。

オヤジだって、最初からオヤジだったわけではなく、
子ども時代もあったし、青春時代もあったわけで、
きっとその頃は、キラキラとしていたことでしょう。
そんな当たり前な事を、もう一度思い出させ、再生の力を与えてくれる、
中年応援不思議ワールドな作品でした。 (2011,06,17)