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「きことわ」
朝吹真理子


永遠子は夢をみる。貴子は夢をみない。葉山の高台にある別荘で、幼い日をともに過ごした貴子と永遠子。ある夏、突然断ち切られたふたりの親密な時間が、25年後、別荘の解体を前にして、ふたたび流れはじめる―。第144回芥川賞受賞。 (「BOOK」データベースより)



第144回、芥川受賞作です。

とても綺麗な文章で、
過去と現代の揺らめきが、清廉な文体で、綴られていました。

取り壊される直前の家の中で、死者の記憶が蘇り、その思い出の中を漂う貴子と永遠子。
25年ぶりに再会した二人には、共通の思い出が、家の中に、満ちあふれていた。

過去の記憶を忘れないことがよいことなのか。
もしかすると、そんな思いが、いつの間にか、死者を記憶に縛り付けて、死者の足を引っ張っているのかもしれない・・・。

思い出の家を取り壊すことで、死者と、生者をそれぞれ解き放ち、本来の場所に戻ってゆく。

人それぞれの考え方次第ですが、なるほどなぁとも思いました。

話の中には、ちょっとホラーっぽいところも出てきます。
それは、もしかすると、彼女たちの単なる勘違いであるのか。
それとも、死者のちょっとしたいたずらであるのか。

文章がとっても綺麗で、印象的でした。
普段使わないような言い回しも多くて、日本語の美しさを再認識しました。

ただ、そんな事を思いながら読んだので、すらすらとは読めず、薄い本の割に、少々苦戦しました(^^)。 (2012,01,14)