シネマチェックトップページbook作家別index題名別index     




「水の柩」
道尾秀介


老舗旅館の長男、中学校二年生の逸夫は、自分が“普通”で退屈なことを嘆いていた。同級生の敦子は両親が離婚、級友からいじめを受け、誰より“普通”を欲していた。文化祭をきっかけに、二人は言葉を交わすようになる。「タイムカプセルの手紙、いっしょに取り替えない?」敦子の頼みが、逸夫の世界を急に色付け始める。だが、少女には秘めた決意があった。逸夫の家族が抱える、湖に沈んだ秘密とは。大切な人たちの中で、少年には何ができるのか。 (「BOOK」データベースより)



中学二年生の逸夫は、自分を取り巻く日常が、いつも普通で退屈だと思っていた。
でも、それは、彼が、何も見ていなかったからなのかもしれません。

退屈で、平凡な人生なんて、そうそう有りはしないでしょう。
気持ちの持ちようや、周囲の見方によって、平凡な日常が、ガラッと変わってしまうことなんて、多々あることだと思います。

でも、中学二年生なら、そんな事、まだ気がつかなくて当然かな。
特に、彼のように、多少の不満はあっても、普通の家庭に育っているならば、
平凡なんて、当たり前のことで、それがまさに”しあわせ”なことなのです。

でも、彼の周りには、いろいろな事情を抱えた人たちが、実は、たくさんいたのです・・・。

冒頭が、ちょっと取っつきにくくて、読み進むのが、遅くなってしまいました。
最初のタイムカプセルに入れる手紙。
そして、少々ミスリードさせるような出だし・・・。
私にとっては、最初の数ページは、なくても良かったかな〜と、思ったり・・・(^^;。

いじめの話が、重要なファクターなのですが、
そのことに、”普通”な生活を送る逸夫は、気がつきません。
ちょっと鈍感?とも思いましたが、自分自身に関係のないことに対する無関心さは、そんな感じなのかもしれませんね。

祖母いくの話も、切ないです。

このような、同級生や、身内の”暗い部分”を知った彼の決断は・・・。

胸に、ずしんとくる話ですが、読後感は良かったです。 (2012,03,01)