「何者」
朝井リョウ
就活の情報交換をきっかけに集まった、拓人、光太郎、瑞月、理香、隆良。
学生の名刺、海外ボランティア、サークルの部長ーーー
自分を生き抜くために本当に必要なことは何なのか。
この世界を組み替える力は、どこから生まれ来るのか。
・・・規定のサイズに切り取られたカラー写真のなかからこちらを見つめてくる。こんな、自分の未来を信じて疑わない目が、日本全国そこらじゅうにある。それだけで、きゅっと心臓が小さくなる気がした。
(帯より)
第148回直木賞受賞作です。
最初は、就活の時期を迎えた若者5人の明るい青春物語なのかなと思って読んでいました。
確かに、就活は大変で、決して”明るい”とは言えない時期だけれど、
それでも、就活の時間をぬって、アルバイトしたり、飲み会をしたり、就職の情報収集をしながら食事をしたり・・・それなりに、楽しそう・・・って、思ってました。
ツイッターや、フェイスブックの書き込みを織り交ぜながら描かれているので、実は、ちょっと読みにくく、また、私自身がこのような時期とは、離れてしまったので、イマイチぴんとこないまま、読み進みました。
中盤は、就活の大変さが、しみじみと分かって、なんて、大変なんだろう!と、びっくり。
そして、ラストは・・・。
これは、ホラーか?!
と思ったほど、怖かったです。ぞっとしました。
人それぞれの、考え方や事情は、あって当然のこと。
でも、隠され、屈折した本音が暴かれてしまったときの恐ろしさには、戦慄しました。
特に、前半が、明るい青春ドラマ風だっただけに、このギャップは、一層、鮮やかでした。
就活は、二十歳そこそこでするわけだけど、それが、今や、人生の一番の山場になっている感じで、追い詰められていく彼らの姿を見て、なんだか、かわいそうになってしまいました。
本当は、社会人としての人生が始まる前段階なのにね。
私は、そんな時期を過ぎてしまっていて、本当に良かった・・・。
(2013,04,03)
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