「ホテルローヤル」
桜木紫乃
恋人から投稿ヌード写真撮影に誘われた女性店員、「人格者だが不能」の貧乏寺住職の妻、舅との同居で夫と肌を合わせる時間がない専業主婦、親に家出された女子高生と、妻の浮気に耐える高校教師、働かない十歳年下の夫を持つホテルの清掃係の女性、ホテル経営者も複雑な事情を抱え…。
(「BOOK」データベースより)
第149回直木賞受賞作です。
ラブホテル”ホテルローヤル”に関わる短編が7編収録されています。
ラブホテルには、なくてはならない人たちや、一見関係のなさそうな人たちまで、様々な人が登場します。
でも、男女の営みは、どんな人にも関係があり、それぞれの事情も、こだわりにも、大いに左右されるのです。
印象に残ったのは、
「本日開店」
住職と大黒。
この人達には、ラブホテルは、あまり縁がなさそうですが・・・。
でも、どんなところにも、需要と供給が存在するって事ですかね。
なんだかなぁーーーと、思う話でしたが、当事者が、それでいいなら、いいのかなとも。
「バブルバス」
この話にも、「本日開店」の大黒さんがちょっと登場しますが、本筋は、ぎりぎりの生活をしている中年夫婦の物語です。
アクシデントによって、手に残った数千円で、思い切ってラブホテルに行った夫婦の物語。
その時の、気恥ずかしさや、高揚感が描かれています。
何というか、プチ贅沢気分というか、そんな感じです。
こんな事で、贅沢感を感じるなんて、なんて、小市民的なんでしょう。
でも、これが、ちょっぴり悲しい現実なのかも。
「せんせぇ」
これも、印象深かったです。
心に深い傷を負った教師と、これまた不幸な事態に陥った女高生との不思議な道行きです。
どう考えても、被害者なのに、あまりにも傷ついてしまったために、そのことをどう受け入れていいのか分からなくなった主人公。
こういう感覚って、本当にあるかもしれないと思っちゃいました。
そんな時は、誰かの力を借りてでも、客観的に、自分の立場を見つめることが大切なのかも。
「星を見ていた」
ホテルローヤルで働く従業員の話です。
苦労に苦労を重ねて、ちょっとした幸せを感じたミコさん。
でも、実は、それには、悲しい結末が待っていた・・・という話です。
彼女の悲しさが分かるし、このラストも好きでした。
(2013,09,14)
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