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「影を買う店」
皆川博子


これぞ、幻想小説の極み
一切の制約から解き放たれた皆川博子の真骨頂が堪能できる至極の21編

「本書に収録されている作品は幻想、奇想ーーーつまり私が最も偏愛する傾向のものーーーがほとんどです。消えても仕方がないと思っていた、小さい野花のような、でも作者は気に入っている作品たち。幻想を愛する読者の手に届きますように」皆川博子(帯より)



中井英夫の「虚無への供物」を読んだ後、本屋さんでブラブラしていて見つけた本です。
まだ、”虚無”から抜け切れていなかったので、ついつい手に取りました。
しかも、私の好きな皆川博子さん!
これは、読むっきゃないでしょう(笑)。

この短編集は、雑誌などに単発で書かれたもので、そういう作品は、こうして、作品集として、拾い上げなければ、そのまま消えてしまう運命なのだとか。
折角、作家さんが、丹精込めて書いた作品なのに、消えていってしまうなんてもったいないことです。
それが、今回、こうして、作品集となって私たちの目に触れるようになったことは、とても貴重で、うれしいことです。

表題作は、中井英夫さんの「影を売る店」のオマージュだそうです。
オリジナルを読んでないのが残念ですが、この皆川さんの作品だけ読んでも、なかなか趣があって印象的な作品です。

そのほかの作品も、幻想的で、面白いです。

親とは切り離されて生活をする幼い姉弟の可愛くも恐ろしい「猫座流星群」や、「迷路」。
指の飼育をする「夕陽が沈む」、戦時下の女学生の恋とピアノを描いた「石榴」などなど、
一瞬で幻想の世界に連れて行かれるものから、徐々に怖さがにじみ出るものまで、いろいろなテイストで楽しめました。

元々私は、短編が苦手で、皆川さんの作品も、長編ばかり読んでいて、短編は読む機会が少ないのですが、幻想小説こそ、短編が似合うのだなと、思った次第です。

これから、しばらく皆川さんの作品に、没頭してみようと思います(*^o^*)。 (2014,05,21)