「トマト・ゲーム」
皆川博子
小説現代新人賞受賞の女流新人が描く
失踪するマシンにかけた青春
オートバイの爆音とジャズの喧噪の中で、若者達は憎み合い、愛し合う。トマト・ゲームの復活とともに甦る過去の悪夢。
5編の短編が収録されています。
まだこの時期、皆川さんは、”新人”なのですが、本の内容は、どの作品も、一筋縄ではいかない、濃厚で、衝撃的で、残酷な物語です。
「トマト・ゲーム」
この題名と、オートバイの登場で、どんなことが行われるのかは、何となく、わかるような気がしました。
それは危険なチキンレース。
でも、そこに至るまでの、過去の物語が、それはそれはショッキングで、衝撃的なのでした。
そして、この結末も・・・。
「アルカディアの夏」
第20回小説現代新人賞受賞作です。
”アルカディア”とは、古代ギリシャの理想郷なのだとか。
少女は、自分が何を求めているのか分からず、迷走を極めてゆき、自分なりの理想郷を作り上げるのですが・・・。
彼女の部屋の中は、想像するのも恐ろしいような状況だったことでしょう。
思春期の女の子が、一歩間違えたら、とことんいってしまうような、不安定さが哀れで、愛おしい。
「獣舎のスキャット」
完全に上位に立っていた姉に対する逆転劇。
なんてことでしょう。
情け容赦のない仕打ちに、恐怖しました。
「漕げよマイケル」
医者の息子のプレッシャーって、相当なんでしょうね。
上を見れば、キリがなく、下にも落ちてゆけないわけです。
親の子供に対する期待も容赦ないでしょうし。
中途半端が、一番辛そう。
「蜜の犬」
やたらに、犬・・・ドーベルマンへのあこがれの感情が出てくると思ったら、あんな結末になるなんて、びっくりでした(^_^;。
それにしても、集団レイプ後、大きな問題にならないことに驚きました。時代のせいですかね。
私が読んだのは、昭和49年発行の講談社の単行本。↓は、文庫本で、どうも収録内容が違うようです(^_^;。
(2014,07,03)
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