水底の祭り
皆川博子
M**湖の湖底は水死者の集う墓場。不意の嵐にくつがえった釣り船から放り出された漁師。自殺者。数百年昔、合戦に敗れ、湖底に追い落とされた落ち武者・・・。そして湖の底から屍蝋と化した水死体が上がったーー疎開中、姉を不幸な惨劇に陥れた湖を訪れる、弟の過去への旅路を描く表題作など傑作短編集。(裏表紙より)
短編とはいえ、読み応えのある5編の作品たちです。
「水底の祭り」
ある小さな新聞記事から、遠い過去の暗い闇が浮かび上がってくる・・・。
戦時下、疎開の地で起こったある事件が発端となり、湖の底に沈んでいた秘密が、当事者の口から語られて・・・。
「牡鹿の首」
剥製師という、珍しい職業の女性の話です。
ストーリーもさることながら、剥製の製作過程も、面白く読めました。
「紅い弔旗」
当初は、熱い理想に燃えて劇団を立ち上げても、年月とともに、人の考えは、変わり、離れていって・・・。
「鏡の国への招待」
カリスマバレリーナが死んだ。
残された人々のそれぞれの思惑は・・・。
「鎖と罠」
海外旅行の添乗員が、仕事のトラブルに疲れて立ち寄った兄の家で、ふと、昔の苦い思い出を蘇らせる・・・。
1976年の作品です。
でも、古さを全く感じさせませず、たまに、戦中戦後の話とかが出てきて、あぁ、これは、そういう時代の話なんだと、改めて思い出します。
ミステリーだけど、どことなくホラー色も感じさせる、皆川さん独特の短編集でした。
(2014,09,21)
[Kindle版]です
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