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鹿の王
上橋菜穂子




命をつなげ。
愛しい人を守れ。
未曾有の危機に立ち向かう、父と子の物語が、いまはじまるーー
この子が育っていくすべてを見守りたい。
やがて、この子は少女になり、娘になり、母になる。そのすべてを見届けたい・・・。
そんな思いが湧きあがってきて、ヴァンはうろたえた。
思ってはいけないことを、思ってしまったようで、怖かった。(裏表紙より)



2015年本屋大賞受賞作です。

ジャンルは、ファンタジーでしょうか。
知らない国の知らない人たちの話です。
なので、その世界に入り込むまでが、私にとっては、なかなか大変でした。
人の名前や、民族、そして、その複雑な関わりなど、押さえておかなければならない事々が、大量に出てきます(^_^;。
それぞれの巻頭に短い人物紹介が付いているので、ずいぶんお世話になりましたが、それでも足りないぐらい(^_^;。

物語は、独角のヴァンと、オタワルの医術師ホッサルの二人がそれぞれ主人公として、交互に描かれています。
最初の内は、一つの物語に慣れ始めたと思ったら、次には、もう一人の話が始まるので、切り替えがうまく出来なくて、大変でした(^_^;。
でも、それも、読み進んでいくうちに、魅力的な登場人物たちのおかげで、物語に没頭出来るようになりました。

多くの民族がいて、それぞれが戦いを繰り返し、 勝った者は、領土を拡大し、人々を支配し、負ければ、殺されるか、支配されるか。
そんな生臭い世界と、方や人々を病から救おうとする医術師たち。
両者が相手にするものは、考え通りにならないところが、似通っているかもしれません。

ストーリーは、終盤に近づくほど、さらに、複雑にややこしくなってきて大変でしたが、
そんな時に、癒やしとなるのが、ヴァンの乗る飛鹿の暁であったり、愛らしいユナの存在でした。
そして、著者が、最初は、主人公にしようと思っていたというサエの冴え冴えとした凛々しい佇まいも、素敵でした。

今回、上橋菜穂子さんの作品は初めて手に取りました。 この作品以前にも、「守り人シリーズ」などがあるそうです。 (2015,09,13)