風の万里 黎明の空
小野不由美
人は、自分の悲しみのために涙する。陽子(ようこ)は、慶国(けいこく)の王として玉座に就きながらも役割を果たせず、女王ゆえ信頼を得られぬ己に、苦悩していた。祥瓊(しょうけい)は、芳国(ほうこく)国王である父が簒奪者(さんだつしゃ)に殺され、公主の平穏な暮らしを失くし哭(な)いていた。そして鈴(すず)は、蓬莱から流され辿り着いた才国(さいこく)で、苦行を強いられ、蔑まれて泣いていた。それぞれの苦難(くるしみ)を負う少女たちは、幸福(しあわせ)を信じて歩き出すのだが──。 (表紙折り返しより)
同じような年頃の3人の少女が、運命に弄ばれながらも、自分の信じる道を模索し、突き進む物語です。
何も分からないまま、蓬莱から連れてこられた(帰ってきた)陽子は、ようやく慶国の王となるが、彼女の苦悩は、まだ始まったばかり・・・。
それにしても、何とも酷な話です。
慣れ親しんだ世界から、言葉も文化も、何もかも違う世界に連れてこられ、「あなたは王なのだから国を治めよ」と言われても、それは無理というもの。
王になる運命だからと、何か特別な特権とか、才能とかが授けられるわけではなく、ただ、その地位だけ押しつけられるなんて。
真面目で、しっかりした人であればあるほど、苦悩も大きいと想像出来ます。
もうちょっと景麒=”しもべ”(^▽^)が、彼女を補佐して欲しかった・・・(^_^;。
陽子が市井の生活を見たいと思うのも、もっともなことです。
他の二人の少女も、それぞれに苦労を重ね、慶国にたどり着き、そして、3人が必然のごとくにめぐり逢い、
3つの物語がひとつになり、大団円へと向かいます。
もちろん、国を治めるという大仕事は始まったばかりですが、彼女たちの未来は、明るく輝いているようでした。
いやぁ、ほんとうに、すっかりはまってしまいました〜(^_^)。
「月の影 影の海」で、泣いてばかりいた女の子が、ここまでしっかりしてきたなんて、感慨無量です。
彼女は、もう、大丈夫でしょう・・・なんて、まるで保護者になった気分(^▽^)。
固有名詞が、さらに読みにくく難解な言葉になってくるので、ちょっと大変でした。
(2016,01,07)
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