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丕緒の鳥
小野不由美





「希望」を信じて、男は覚悟する。
慶国に新王が登極した。即位の礼で行われる「大射」とは、鳥に見立てた陶製の的を射る儀式。陶工である丕緒は、国の理想を表す任の重さに苦慮していた。希望を託した「鳥」は、果たして大空に羽ばたくのだろうかーーー表題作「丕緒の鳥」ほか、己の役割を全うすべく煩悶し、一途に走る名も無き男たちの清廉なる生き様を描く全4編収録。 (裏表紙より)



とうとう、十二国記の最新作・・・といっても、3年前の出版ですが・・・で、今のところ、これがシリーズ最後の作品です。
短編が4編。
王とか、麒麟とかの話ではなく、役職に就く、しかし、一介の人たちの話です。


「丕緒の鳥」
王の登極を祝う席での催しである「大射」に使う、陶製の鳥を作る職人の話です。
陶器の鳥を投げて、それを射貫く行事で、様々な意匠を凝らし、人々を楽しませるというもの。
陶工は、作品に人民の気持ちを込めようとするが・・・。
陶工の葛藤もよく分かりましたが、むしろ、過去に作った鳥の様々な見事な仕掛けの説明に、その状況を想像して、うっとりとしてしまいました。

「落照の獄」
禅問答のような、いくら考えても、正しい答えが出ないような話でした。
リアルな世界にも、通じることではあるのですが・・・。

「青条の蘭」
森を救うために、命がけで王に届けようとする役人の話です。
止めようもない荒廃を必死に止めようとする、こういう人がいなければ、ただ国は、滅びるのみです。
ただ、品物だけが届いたとして、それで、王にその意味が分かるものなのか・・・疑問です(^_^;。

「風信」
戦争が起きても、国が乱れても、人が死んでも、基礎となることをおろそかに出来ない。
継続は力なりですね。



今回は、シリーズのサブ的な話ばかりで、正直、読んでいてもイマイチ盛り上がりませんでした。
やはり、私が知りたいのは、戴国のこと。
王や、泰騏は、どうなってしまうのか。
そして、慶国の行く末。
小野さん、新作お待ちしています! (2016,02,26)