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エアーズ家の没落
サラ・ウォーターズ


かつて隆盛を極めながらも、第二次世界大戦終了後間もない今日では、広壮なハンドレッズ領主館に閉じこもって暮らすエアーズ家の人々。かねてから彼らと屋敷に憧憬を抱いていたファラデー医師は、往診をきっかけに知遇を得、次第に親交を深めていく。その一方、続発する小さな”異変”が、屋敷を不穏な空気で満たしていき・・・・。企みに満ちたウォーターズ文学最新の傑作登場。 (裏表紙より)



サラ・ウォーターズの作品を読むのは4作目です。
趣向があって面白く、読んでいてちょっとワクワクさせてくれるのがうれしい作家さんです。
ただ、前回読んだ「夜愁」がイマイチだったので、残念だったのですたが、今回のこの作品は、彼女の作品の中では、一番面白いと聞いていたので、楽しみにしていました。

描かれている時代は、大地主時代の終焉を迎えた第二次世界大戦後のイギリス、そして、舞台となるのが古くて大きなお屋敷と、私の好物ど真ん中!(^▽^)。
しかも読み進むと、まるでホラーのような話になってくるではないですか!!
もう、これには、本当にワクワクしました!

この本、題名は、”エアーズ家の没落”ですが、実は、物語の始まったときには、すでに、もう没落しまくっています。
館の隆盛期は、昔話として語られるだけで、屋敷の中は荒れ放題。住み込みの召使いもたった一人というさみしさです。
なので、これまでの没落した経緯の話なのかと思ったのですが、あに図らんや、今現在以降の没落の話なのでした。これ以上の没落って・・・!?ひどすぎます・・・(T_T)。

物語は、エアーズ家の主治医ファラデー医師の目を通して描かれます。
昔の思い出から、キャロラインへの恋心、そして、崩壊し続けるハンドレッズ領主館について、時には冷静に、そして、時には狂おしく語られてゆきます。

ファラデーは、医師なので、考え方は科学的で、理論的。
でも、館で起こっていることは、まるでホラーなので、そのあたりのとらえ方の違いが、また面白さを増幅させてくれました。

場面の変わり目には、「・・・ハンドレッズ領主館では、恐ろしいことが起こっていた・・・」などと怖そうな文言があったりして、本当に、その都度ドキドキさせられ、読み進むのに、ちょっとした覚悟が必要だったりするのも、楽しかったです(^▽^)。

次は彼女の日本語訳されている今現在における最後の作品「黄昏の彼女たち」です。 (2018,07,16)