坂の途中の家
角田光代
刑事裁判の補充裁判員になった里沙子は、子供を殺した母親をめぐる証言にふれるうち、彼女の境遇に自らを重ねていくのだった―。社会を震撼させた乳幼児の虐待死事件と“家族”であることの光と闇に迫る、感情移入度100パーセントの心理サスペンス。(「BOOK」データベースより)
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子殺し事件の、裁判員に選ばれた主人公の話です。
人の心の繊細さが描かれています。
何気ない他人の一言が、心にトゲとして突き刺さり、その繰り返しで壊れていく人。
普通に暮らしている主人公の気持ちが、被告の女の行状とシンクロして、狂気に近づいてゆく・・・。
読みながらずっとイライラしていました。
人と人とのコミュニケーションにおいて、こんな繊細すぎる心を持っていたら、確かに、つらいことです。
ただ、そんな彼女に、よかれと思って言ったことでも、全て悪い方向に受け取られてしまうのなら、何も語れなくなってしまいます。
また、その発端が、彼女の母親の言動にあるということならば、それは、かつて言われたことのある”母原病”に近いなと思ってしまいました。
本の構成は、裁判で事件の真相が、色々な人の目線で繰り返し語られています。
劇的な結末があるわけではなく、結局、それなりのところで結審してしまうのも、拍子抜けでした。
また、確か2回あったと思いますが、知りたかった話の結論が、どうなったのかが語られないままに、話が進むところがあって(もちろん後で分かるのですが)、そこが一番イラッとしました。
(2019,04,29)
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