満潮に乗って
アガサ・クリスティ
大富豪ゴードン・クロードが戦時中に死亡し、莫大な財産は若き未亡人が相続した。 戦後、後ろ盾としてのボーゴードンを失った弁護士や医師らクロード家の人々は、 まとまった金の必要に迫られ窮地に立たされていた。 ”あの未亡人さえいなければ”一族の思いが憎しみへと変わった時・・・ 戦争が生んだ心の闇をポアロが暴く
(裏表紙より)
戦後(第二次世界大戦後)を経て変わりゆく人々の生活の中から生まれた悲劇を描いたポアロ登場のミステリーです。
今回も長い話の前半は、登場人物の生活がゆっくりと描かれています。
クロード一族が登場しますが、彼らの人間関係を掴むのに、一寸だけ苦労しましたが、そこをきちんと理解しておかないと、物語の面白さが分からないかもしれません。
この作品の特徴は、ポアロが終盤に言うように、事件の動機がちぐはぐなことです。
このことは、最後に至るまではっきりとは分からず、ポアロが謎解きをして初めて理解出来ました。
まさに、難事件でした。
戦争がもたらした悲劇と、そこから派生する人々の思惑、悪意、魂胆。
人の心は、変わらないようでも、少しずつ変化していくのでしょう。
善良な人々に幸あれと願ってしまうようなラストでした。
(2022,08,03)
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