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ゼロ時間へ
アガサ・クリスティ


残忍な殺人は平穏な海辺の館で起こった。殺されたのは金持ちの老婦人。
金目的の犯行かと思われたが、それは恐るべき殺人計画の序章にすぎなかった――
人の命を奪う魔の瞬間"ゼロ時間"に向け、着々と進行する綿密で周到な計画とは?
ミステリの常識を覆したと高い評価を得た野心作。 (より)


バトル警視シリーズの最終話です。
といっても、”シリーズ”ともいえない、わずか5作品に登場しただけの彼ですが、インパクトは、強かったです。

あるときはポアロと協力して事件を解決し、あるときは、最後にちょこっとの登場で、印象的な仕事をし、という彼は、無表情で、無骨で、なかなかの切れ者という設定でした。
そんな彼が、本作では、プライベートなことも書かれているので、より親近感を感じて、彼のファンには見逃せない作品となっています。

”ゼロ時間”とは、本文の中にも書かれているように、年月を経て殺人に至った瞬間の時間のことです。
殺人事件に至るまでの時間を丁寧に描くことで、より事件の奥行きを感じられる作品でした。

その中でも、特徴的だったのは、ある一人の登場人物。
最後の最後まで、彼がどういう役割を担うのかが分からず、??と思っていたのですが、ラストになって、やっと分かった時には、なあるほどと、思ったのでした。

この犯人の心理は、私の想像を超えるもので、こんなにも、冷静に人を陥れることが出来るのかと、ぞぞーとさせられました。
ですが、ラストは、出来すぎなほど幸せに終わり、やり過ぎ感もありましたが、それでも笑顔で読み終えることが出来てよかったです。

ただ、謎解きには、少々無理矢理な所もあり、バトル警視、ちょっと苦労したなと思うのでありました。

こういった、お金持ちの人たちの複雑な事情を描いた殺人事件の作品は、大好きなので、最後までワクワクしながら読むことができました。 (2024,04,02)