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死が最後にやってくる
アガサ・クリスティ

倣慢で美貌の愛妾ノフレトを連れて族長が帰ってきた。
その日から、一族の中には反目や憎しみが。
そしてノフレトが崖の小径から転落死を遂げた。
これで再び平和が戻ってくるかに思われたがーー
紀元前二千年のナイル河畔で起こった恐るべき惨劇!
エジプトの古代都市を舞台に華麗な世界が展開する異色ミステリ。(解説・深堀骨) (裏表紙より)


紹介文にあるように、紀元前二千年のエジプトを舞台とした、クリスティとしては異色のミステリで、 何も知らずに読み始めてびっくりでした。
登場人物の名前に全くなじみが無くて、なんとも読みにくく、最初はどうしようかと途方に暮れたのですが。

でも、読み進めるうちに、彼らの名前にも慣れ、どんどん物語の中に引き込まれてゆきました。ここら辺は、さすがにストーリーテラーのクリスティです。
時代や風習が違う世界でも、人間性は、普遍であることを、そして、どこにでも、このようにミステリーの題材があることを教えてくれるのでした。
クリスティは、まったくもってすばらしい。

登場人物の名前や時代の風習に慣れた中盤以降は、これがクリスティのミステリーであることも忘れて夢中になって読みました。
深堀骨さんの解説にもあるように、彼女の卓越した「人間関係の綾」を描き切れている、すなわち、”人間が描かれている”ということなのでしょう。
彼らの関係を描いているうちに、終いには、きちんとしたミステリになっているのですから、満足度も高いです。

終盤は、いつものように、一体誰が、どんな理由で??という謎解きに自分でも挑戦しながら読むのですが、これが全く当たらないのは、どうしたわけでしょう。
読み終わってから考えたら、分かって当然のような気がするのに、です。

とにかく、いつもと違う趣向のクリスティの作品、とても面白かったです。 (2024,07,04)