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八月の御所グラウンド
万城目 学

女子全国高校駅伝―都大路にピンチランナーとして挑む、絶望的に方向音痴な女子高校生。謎の草野球大会―借金のカタに、早朝の御所Gでたまひで杯に参加する羽目になった大学生。京都で起きる、幻のような出会いが生んだドラマとは―人生の、愛しく、ほろ苦い味わいを綴る傑作2篇。 (BOOKデータベースより)


久々に読みました。万城目学さんの本、表題作は直木賞受賞作品です。

「十二月の都大路上下ル」は、京都の街を急遽走ることになった女子高校生の話です。
関西に住んでいる私でも、大阪人の私には京都の町は摩訶不思議。
私だって、町の名前は読めないし、方向音痴はひどいしで、とても共感を持って読めました。
陸上競技の中でも、駅伝は、長丁場だし、責任は重いしで、色々な意味で、大変そう。
そんな中、晴れやかなラストが印象的でした。

表題作の「八月の御所グラウンド」は、京都御所の中にあるグラウンドで行われる野球大会の話です。
京都の夏の暑さが痛いほど伝わってきて、今年の夏も暑いよねーーと、共感しつつ読みました。
ちょっと無理矢理の野球大会。
それでも人は、9人揃って、なんとか試合にも勝ってしまったり。
そんなこんなの中で、ある不思議なことに気がつく主人公の話です。
そうか、プロ野球で有名なあの賞は、そんな経歴を持つすごい人物だったのかーーとはじめて知りました。
日本は、そして、あの頃の若者たちは、厳しい時代を駆け抜けていったのですね。

こういう話を書かせたら、やっぱり万城目学は、一級品です。
軽やかに読めるのに、心にじんわりと染み渡ります。 (2024,07,16)