学校飼育動物を考えるページ  学校飼育動物研究会
   
 新聞記事


2017年3月3日 日経新聞 「学校の動物飼育続けて〜『命の学習』地域で支援〜思いやりの心はぐくむ効果」
2015年 2月17日 読売新聞 【生活調べ隊】
@学校に動物「命の教育」〜誕生、死・・・実感する機会

A獣医師が飼育手助け〜健康管理や接し方指導
2014年 9月22日 日本教育新聞 「動物飼育を通して思いやりの心育む〜掃除や餌を準備 誇らしげ、会話の苦手な子 居場所」 武蔵野大学附属幼稚園
2014年 5月 8日 教育新聞 「獣医が飼育委員に講習、教員研修で教育的効果を語る〜動物との関わりで共感や思いやり〜」 秦野市立南ヶ丘小で
2014年 4月13日 朝日新聞
(大阪市)
「ウサギ正しく飼って。学校、不適切な例も。相談望む獣医師会」
大阪府獣医師会
2013年12月12日 神戸新聞 「動物飼育の小学校減少 命の大切さ学ぶ機会」 
 神戸市獣医師会
2013年11月16日 神戸新聞 「ウサギの扱い方知って〜美賀多台小 獣医師が授業」
神戸市獣医師会
2014年1月29日 愛媛新聞 「命のぬくもり実感〜松山で県獣医師会 講演会 
  児童ら動物の飼育学ぶ」
 教員研修&ふれあいモデル授業
2013年10月30日 愛媛新聞 「動物知って命学んで〜松山・立岩小で教室 
   獣医師ら児童に助言」
   ふれあい授業
2013年10月24日 愛媛新聞 「ウサギの親子 ようこそ〜松山 たちばな小が椿小へ譲る」
2013年9月22日 愛媛新聞 「野良猫に無料避妊手術 県獣医師会 殺処分減へ」 社会面
2013年9月2日 日本教育新聞 「モルモットが不登校児救う 奈良・香芝市立下田小学校(全国学校飼育動物研究大会から」
2013年7月13日 朝日新聞
 be版
「サザエさんをさがして」ニワトリ 身近にあった命のぬくもり
2011年9月号
(記事なし)
愛知のPTA
(西尾張地区)
(社)愛知県獣医師会 主催 県民公開講座「命輝く・・命と心の教育〜動物飼育を通して〜」(8月10日)についての紹介記事
演題「言葉では伝えられない〜こころ・いのち脳をはぐくむ〜」
2011年8月9日 福井新聞 「若狭町で教員研修講座 命の教育小学校でどう実践?獣医師、簡単な世話アドバイス」
2011年8月1日 教育新聞 「動物のぬくもり感じ心育む〜都教委の動物ふれあい教室を日野市立滝合小学校が生活科で」
2011年7月12日 福井新聞 <ふくい学びの場>(2)春山小・・モルモット飼育から2ヶ月/命の重さ心に刻む・・思いやり、責任感・・児童成長、教室に一体感
2011年5月24日 福井新聞 <ふくい学びの場>(1)学校飼育姿消すウサギ、鳥。「命」学ぶ機会減る・・「世話が大変」だから教育的効果も/春山小「飼う」で意見一致
2011年1月1日 朝日小学生新聞 「小学校での休みの対応事例**世話・楽しく** 」
2010年12月2.2日 朝日小学生新聞 学校の動物/休日のえさ、どうしてるの・・親子で順番に世話(西東京市柳沢小)、「心配だから」自主登校(愛知・田原市泉小) @A
2009年5月 共同通信から新聞各紙へ <教育を考える>動物飼育で命の実感、共感の回路を養う、五感通した生と死の感覚を
2009年2月16日 日本教育新聞 「学校を支える地方自治体の動き」
2009年1月26日 教育新聞
(愛知県版)
教育の心・技「生き物との関わりにも注目」 豊川市立平尾小学校長
2008年2月10日 下野新聞 「ウサギを育て、育つ優しい心 言葉より実体験 情操教育に効果
動物飼育教育 続ける茂木町・須藤小」
2008年1月18日 下野新聞 「学校で動物飼育 心の教育に効果 宇都宮大でシンポ」
2008年1月31日 しんぶん赤旗 「学校での動物飼育〜地域の協力うけ前進 大戸小学校の研究大会での経験発表 全校で世話、関心高まり成長も 獣医の支援も大きな力に」
2007年12月9日 朝日新聞 落第忍者乱太郎の学問のススメ「学校で生きもの飼う理由は?」
2007年11月30日 朝日新聞 「動物飼育法伝授へ協定〜獣医師が小学校で手弁当の指導
「品川区と都獣医師会支部」
2007年11月1日 読売新聞 教育ルネサンス「道徳の力 生き物通じ命を思う」
2007年9月26日 しんぶん赤旗 「命の大切さ、愛する心・・重要な学校での動物飼育」
2007年8月29日 日本経済新聞 「小中学校の飼育動物 都獣医師会が治療〜品川区教委協定を締結
2007年7月16日 日本教育新聞 「夏休みの動物飼育をどうするか・保護者の協力得て命の営みを理解させる」
2007年6月15日 朝日新聞(東京版) 学校獣医師・命伝える〜飼育指導で自治体と進む連携」寄り添い児童の心養う
2007年冬号 毎日ペット新聞 命の教育に生かすために 見直される 「小学校の動物たち」
2007年1月13日 日本経済新聞 動物飼育で優しい子 お茶の水大 調査で裏付け
2007年1月23日 朝日新聞 学校で動物飼育、教育効果あり 座席譲るなど社会性育む
2007年1月22日 日本教育新聞 動物飼育で社会性向上 お茶の水女子大グループ 
2006年11月10日 日本経済新聞 広がる獣医師による教員研修 動物の飼い方先生も学ぶ〜「命の大切さ」研修広がる 獣医師・自治体と協力 
2006年9月11日 日本教育新聞 感性揺さぶる飼育体験に
2006年9月9日 読売新聞 群馬県  動物飼育 生かそう教育に・各小学校に「獣医師」指定
2006年2月20日 産経新聞 教育面(朝刊) 増える学校獣医師飼育や「命の学習」支援
2005年8月28日 下野新聞 『心の教育に動物を』―宇都宮で市民講座―
2005年7月31日 西日本新聞 動物と接し「命」学ぼう ―獣医師会と行政 学校飼育で連携 <視点・論点>
2005年7月4日 日本教育新聞   『動物飼育』〜命の大切さ知り 思いやり育てる〜
2005年3月16日 千葉日報 「開かれた学校で動物飼育」
2005年2月11日 日本教育新聞 子どもが変わる!! 教師、獣医ら初の研究発表大会
2004年12月13日 日本教育新聞 全国学校飼育動物研究会第一回大会案内
「子供達と動物たちのとのふれあい」
全国学校飼育動物研究会が来年1月に第1回研究発表会開く



下野新聞 2008年2月10日
「ウサギを育て、育つ優しい心 言葉より実体験 情操教育に効果 動物飼育教育 続ける茂木町・須藤小」

 毎日ウサギと触れ合い、休みの日には家族が協力して飼育―。そんな学校での動物飼育教育を五年以上続けてきた茂木町須藤小(93人)。子どもたちに、弱者をいたわる心や責任感が出てきたという。愛情をかけてウサギを育てる子どもたちの姿を紹介する。
(小林睦美)

 一月下旬の昼、子どもたちが続々とウサギ小屋の前に集まり、わらを交換したり、水を取り換えたりして掃除を始めた。驚かせないように、ウサギに話し掛けながら手際よく作業を進めていく。
 静かな山あいにある同校は、2001年に地域の獣医師と連携してウサギを飼育する事業に取り組んだ。それ以来、情操教育の柱として動物飼育教育に力を入れている。
 「しろ」「くるみ」「みるく」「チャー」。四匹には全て名前が付いている。「抱っこもできる?」と尋ねると、「もちろんできるよ」「あったかくて気持ちいいよ!」。ふんが洋服に付いても気にせず、笑顔で抱き方を教えてくれた。
 四−六年生の九人でつくる飼育委員会が毎日の世話をしているが、昼休みや休み時間には、委員会以外の子どもたちも小屋に来て触れ合う。
 教師が動物の世話をするケースが多い土日や長期休暇は、同校では、全校児童がローテーションを組み、家族で学校に来て掃除や餌やり、運動をさせている。
 全校児童が生態や抱き方を学ぶ年一回のラビット集会も恒例になった。
 「学校のウサギが大好き。みんなが、かわいがってウサギを触ってくれる時が一番うれしい」と六年の町井瑠奈さんははにかむ。
 飼育担当の佐藤洋子教諭は「性格が荒っぽかった子が、ウサギは弱い動物だと知って優しく接するようになったり、いやいやだった子が進んで世話をするようになったり。いくら言葉で『命は大切』といっても効果はない。命と触れ合う実体験が必要なんです」と、動物を生かした情操教育のメリットを強調する。
 町が契約した専属獣医師の存在も大きい。佐藤教諭は「安心して飼育ができます。『耳に何か付いている』『足のつめの間から血が出ている』などと子どもも健康状態を細かく確認するようになりました。子どもの観察力は大人以上」と言う。
 五年女子の母である岡本きよみさんは動物飼育教育の効用を実感する保護者の一人。「入学したばかりのころは怖くて近づけなかった娘が、今はすっかり夢中になり、一匹一匹の性格を説明するまでになりました」。
 学校での飼育が自信になり、自宅でも犬を飼い始めたという。「責任感を持って世話をしています。勉強は二の次でいい。心の優しい子に育ってほしい」と目を細める。
 動物の飼育が思いやりをはぐくむとする声は多い。継続することで、じわりじわりと効果が出ることを学校も保護者も実感している。

下野新聞 朝刊 2008年1月18日(金)  栃木県
『学校で動物飼育 心の教育に効果』 宇都宮大学でシンポ


 「学校教育における動物教育に関するシンポジウム」(県獣医師会主催)が17日、宇都宮市峰町の宇都宮大で開かれ、子どもたちの心を育てるための動物飼育の在り方などについて専門家らが講演した。県内の獣医師や幼稚園・保育園、小学校の動物飼育担当者ら約230人が参加した。
 東京大の唐木英明名誉教授は「社会性を養うためには動物と触れ合う豊かな経験が効果的」と説明。全国学校飼育動物研究会の中川美穂子事務局長も「思いやりや洞察力が育つ」と協調。「そのためには普段から継続して動物とかかわることが必要」として、学校での動物飼育の留意点などを例示した。
 宇都宮大農学部の長尾慶和准教授は、大学の家畜を活用して行っている小中学生の体験学習の効果について紹介。「動物や科学への親近感や興味が深まる」とした。
 県教委の委託を受けて県獣医師会が実施している学校支援活動の報告も行われ、矢部真人副会長は「『命は一回しかない』ということを動物を介して子どもたちが学んでもらえれば」と訴えた。


しんぶん赤旗 2008年1月31日付 (くらし・家庭面)
『学校での動物飼育 地域の協力うけ前進〜
  大戸小学校(東京・町田市)の研究大会での経験発表から』

 
学校での動物飼育の経験を交流し、保護者や獣医師を交えた飼育支援ネットワークを広げようとこのほど、「第8回全国学校飼育動物研究大会」(主催・全国学校飼育動物研究会)が東京で開催されました。
各地の学校関係者や獣医師など約300人が集い、交流・学びあいました。

○全校で世話、関心高まり成長も〜獣医の支援も大きな力
「命を育てる」貴重な体験学習
 
 動物とふれあいながら継続して育てることは、「命を育てる」貴重な体験学習です。一方で「休日の飼育体制がない」「飼育指導できる人がいない」などの理由で、飼育をやめる学校もあります。同大会では、地域や獣医師の支援体制を整えて動物飼育に取り組む東京・町田市立大戸小学校の経験が発表されました。
 大戸小学校は、児童数173人。緑に囲まれた小さな学校です。都営団地など集合住宅に住む児童が多く、家庭で動物飼育経験のない子が大勢います。
 この小学校が数年来、全学年でとりくむ動物飼育を大きく発展させてきました。「ふれあい広場」と名づけた20メートル四方の広いスペースには、ログハウス風の飼育小屋、築山、ベンチなどがあり、子どもたちはウサギやチャボ、ヤギなどを飼育し、ふれあっています。
 「休日の世話」問題を解決したのは、地域・保護者との協働です。平日の世話は全学年の子どもたちと教職員が分担し、休日は地域の人たちが担っています。飼育小屋の材木の提供や建設作業などでも地域の大きな協力がありました。
 昨年4月には「ふれあい活動推進委員会」を立ち上げ、飼育環境改善なども含めて、学校・地域が協力して運営するシステムをつくりました。同委員会は、活動資金をつくるため、エコバッグや動物の絵柄をプリントしたTシャツの製作・販売もしています。

「動物の死を見て死ねと言えなく」
 きっかけは研修会で出会った獣医師のアドバイスでした。多種・多頭飼育に手が回らず悩んでいた教員に、数を減らすこと、地域の支援を得ることが提案されました。さっそく動物を適正数に減らし、子どもたちが親近感をもてるよう動物に名前をつけるなど、実践が始まりました。
 地域の支援体制が整った今年度は飼育活動を、作文や詩、図工のテーマにしたり、児童集会で飼育委員会の子どもが実践を発表するなど、日常的な活動に生かす工夫を強めています。
 動物とのふれあい活動を通して子どもたちも変化。年度初めにはしぶしぶ参加していた子どもが、飼育活動を通して関心を深め、やがてヤギの散歩に挑戦するようになりました。
 昨年夏、ヤギのバニラが危篤に陥ったときには、教職員や子どもたちが交代で看病にあたりました。獣医師も連日往診してくれました。死んでしまった後、「(バニラの死が悲しいから)頭にきても、これからはもう“死ね”って言えない」と話す子もいました。
 大会では、各地から九つの発表があり、文部科学省の教科調査官が新しい教育課程での動物飼育の位置づけなどを講演しました。
 大会のまとめでは、「行政の支援体制の方向」や「飼育の仕方や注意点」がはっきりしてきたことなどに言及。「今年新しくなる学習指導要領では、動物飼育の位置づけがより明確になります」と活動の推進を呼びかけました。



朝日新聞 朝刊 2007年12月9日(日)  教育面

<落第忍者乱太郎の学問のススメ>
Q 学校で生き物飼う理由は?
A 命を尊び、協調心を育てるためです

乱太郎  今日は学校で飼っている動物について教えてほしい。学校はどこでも飼っているの?
   A   全国の小学校の9割程度が何らかの動物を飼っているといわれています。
       たとえば、茨城県の昨年の調査では98.1%、埼玉県の今年の調査では94.9%の小学校が
       飼っていました。神奈川県は78.3%、群馬県は74.7%(いずれも昨年)でした。

乱太郎  どんな動物を飼っているのかな。
   A   ウサギやニワトリ、チャボ、中にはクジャクやハムスターを飼っている学校もあります。
        もともとは地域の人から寄付された動物を飼い続けるケースが多かったのですが、92年
       から小学1、2年に「生活科」が導入されたのをきっかけに飼い始めた学校もあります。
       生活科の目標の一つに、身近な動物など自然とのかかわりに関心をもつことが挙げられて
       いるからです。
        ただ最近は鳥インフルエンザの発生や、先生たちの忙しさから飼育をやめる学校も出て
       きています。

乱太郎  動物を育てることには、どんな意味があるの?
   A   命の大切さを感じたり、友達と協力することや責任感を学んだりできます。
         無藤隆・白梅学園大学教授らは05〜06年、学校で動物の世話をしている子としていな
       い子を対象に調査をしました。それによると、世話をしている子は1年後、電車で高齢者に
       席を譲るなどの社会性が上昇する傾向にある――という結果が出たそうです。 

乱太郎  でも、動物の世話は大変だよ。
   A   飼育の正しい知識をもっている先生は限られるので、獣医師と協力することが必要です。
        群馬県のように獣医師会に委託し、獣医師が学校に出向いて動物の健康診断をしたり
       衛生管理を指導したりするところも増えています。
       休日の世話を誰がするかも問題です。金曜日に休日分のエサをまとめてやる学校が多い
       ですが、全国学校飼育動物研究会の中川美穂子事務局長は「毎日きちんと世話をするこ
       とが大切。命に休みはありません」と呼びかけています。
        とはいえ休日に子どもを登校させるのは心配という声もあります。
        東京都町田市立大戸小学校では、地域住民と教職員が推進委員会を作り、休日の
       エサやりや掃除をしています。月に一度は子どもも参加します。
       手作りの飼育小屋と専用の広場にいるのはヤギ2頭、ウサギ3匹、チャボ3羽、ウコッケイ3羽。
       曜日ごとに担当の学年を決め、全員で世話しています。昨年、約10年飼っていた
       ヤギが死亡した際は卒業生も駆けつけました。
       吉岡俊幸校長は「子どもたちは命の大切さや思いやりを体験的に学んでいるようだ」と
       話しています。                                        (葉山梢)

掲載写真:「休み時間を使ってヤギにエサをやる子どもたち=東京都町田市立大戸小学校で」



読売新聞 朝刊 2007年11月1日(木)
教育ルネサンス bV00


「道徳」の力 3  『生き物通じ命を思う』

 3日連続の授業で「いのち」を意識させる道徳がある。

 東京都中野区立鷺宮小学校の1、2年生は10月11日、生活科(※)の時間を使ってバスで三鷹市の都立公園に向かい、自然観察をした。
 「今日は虫を捕りますが、その後どうするかは、皆さんで考えて下さい」
 「いのちの教育」の時間という位置づけの2年生には、担任があえて、採取した虫をどう扱うかを児童に指示しなかった。
 最初は、「家に持ち帰って飼う」とはしゃいでいた子供たちだが、観察が終るころには、数人が担任に質問に来た。「このバッタ、足が傷ついているから逃がした方がいい?」「まだ小さいコオロギだから、草むらに戻していい?」

 2年生の「いのちの教育」は、10月9日から11日まで行われた。
 初日は学級活動の時間に、西東京市の獣医師中川美穂子さんと、学校で飼っているチャボを怖がらせずに抱く体験をしながら、「言葉を話せない相手の気持ちを考える」ことを学んだ。
 2日目は道徳の授業。吉本恒幸校長(57)が教壇に立った。道徳の副読本の中から、交通事故のけがが原因で亡くなった愛犬を悼む女児の話を読む。「死ぬって、どんなこと?」と聞かれた子供たちは神妙な顔で答えた。「動かない」「息が止まる」「目が開かない」・・・・・・。
 聴診器で自分やクラスメートの心音を聞かせた後、吉本校長は再び問いかけた。「生きているからこそ、やりたいことは何か考えてみましょう」
 そして、3日目は「命とは何か」を考えてもらう総仕上げの場だった。

 自然観察を道徳教育に組み込んだのは、吉本校長の発案だ。
 「生活科には、身近な生命に気付く学習目的がある。加えて、児童は『命をどうすれば守れるのか』という葛藤を通じて、自らの成長にも気付く。生きていることを実感する、大事な道徳教育だと考えています」
 今年度は6年でも、1、2月にいのちの授業を実施する。地域の保育園、老人ホームなどの職場に派遣し、仕事を体験しながら、働く大人たちに「何のために、どんな気持ちで日々働いているか」を聞く。その結果を教室で発表し合い、限りある命を発揮していくことや責任を持って生きていくことを考えてもらう。
 「生命を考える機会は、実は普段の学校生活の中に転がっている。それらを子供たちの心に響くように関連づける工夫こそが大切」と吉本校長。それは、学校の教育活動全体を通じて道徳性を養うという、道徳教育の基本にも通じる。  
                                                      (高橋敦人、写真も)

※生活科:小学1・2年生の社会と理科に代わって、1992年度から登場した教科。学習指導要領には、学習内容の一つとして、「動物を飼うなどして、生命を持っていることや成長していることに気付き、生き物への親しみをもち、大切にすること」が挙げられている。1・2年の道徳の「動植物に優しい心で接する」「生きることを喜び、生命を大切にする心を持つ」ち関係が深い。

掲載写真:「初日  獣医師と一緒に、チャボを抱っこ」
       「2日目 校長が授業。心音を聴く」
       「3日目 足が傷ついたバッタを草むらに放す」



しんぶん赤旗 2007年9月26日(水) くらし・家庭面

『命の大切さ、愛する心・・・〜重要な学校での動物飼育』
全国学校飼育動物獣医師連絡協議会 主宰 中川美穂子さんに聞く


多くの小学校で動物が飼育されています。自宅で動物飼育経験が少ない子どもが増えるなか、改めて見直されています。全国学校飼育動物獣医師連絡協議会主宰の中川美穂子さんに、学校飼育の意義や現状、獣医師の支援活動について聞きました。 (畑野 孝明)

<他の子との関係改善にも>
○動物から頼られ自身や自尊心が
 いま全国の小学校の9割で動物が飼育されています。90年代初頭には98%だったことからみると減少しています。動物飼育の教育としての位置づけが不明確で、まだ十分な準備や専門家が援助するシステムがなかったため、さまざまな問題が表面化しました。学校にとって、「飼育」が負担になっている現状がみられるのは残念です。
 まず考えてほしいのは、動物を積極的に飼育することは、貴重な教育的効果があるということです。
 子どもたちは、動物の健康に気を使いながら育てるうちに、動物から頼りにされたり、懐かれることで、動物をかわいいと思うようになります。動物に喜ばれる自分の価値に気付くことができます。自信や自尊心を得ることは、他の子たちとの関係改善にもつながります。
 特定の動物と長くつきあいかわいいと思う中で「命の大切さ」「愛する心」「人を思いやる心」「動物への興味」「ハプニングへの対応」などがつちかわれます。えさを与えたり、ふん尿の世話をすることは、擬似育児体験ともいえます。
 また動物との接し方で、子どもの心が見えてきます。「命の大切さ」を分かるには、言葉として学ぶだけでなく、実際に自分が世話をし、命を実感することが重要なのです。飼育が子どもの楽しみになることは、各地のすぐれた実践が示しています。

○正しい知識もち適切な飼育に
 動物飼育の教育的意義とともに大切なのは、飼育の正しい知識です。
 小学生の多くは、自宅でペット飼育を経験していません。指導する立場の教員も、動物飼育の教育や研修を受けておらず、家庭で飼育体験のない教員も大勢います。校長や管理職も例外ではありません。
 正しい知識がないと我流の飼育が行われます。適切でない扱いをすれば動物に反撃され、飼育が嫌になります。十分な世話をしなければ飼育舎が「臭くて汚い」場所になります。子どもたちが、動物に愛情をもつという出発点にさえ立てない学校が多いのも現状です。
 ウサギやニワトリなど、寿命が長すぎず、世話しやすい動物を、世話できる頭数だけ飼育するように変えるだけでも、小屋の手入れがしやすくなります。

<獣医師との連携は欠かせない>
 動物飼育を正常化するには、学校だけの努力には限界があります。地域の獣医師との連携は欠かせません。実際に各地で、獣医師が学校に出掛けていって、動物との接し方を指導したり、動物飼育の授業を援助したりといった連携が広がっています。獣医師会と連携・協力している自治体の数は、89年にはたった一つでしたが、06年には153自治体にまでなっています。
 群馬県では、98年から県内小学校の8割以上で獣医師が小学校に出向いて関心・愛情をつちかう「動物ふれあい教室」を実施しています。県と獣医師会双方が予算措置をとって、「触れ合い指導案」「ふれあい実施マニュアル」「エキゾチック診療ガイド」などの指導書を作成しています。県教育委員会は、教員や校長などの研修や、各学校にかかりつけ獣医師を置く制度もスタートさせています。
 東京・西東京市では、市と獣医師会が学校飼育動物の診療・飼育指導の契約を結び、定期学校訪問や授業支援などを通して飼育を援助しています。日常的助言の結果、治療件数が減少し、生活科や総合的学習の時間の授業支援は獣医師にも楽しい≠ニ好評です。
 こうした活動がさらに広がっていくことを期待しています。

掲載写真など:「小学4年生の『総合学習』の授業を手伝う中川さん=東京・西東京市」
         「飼っている動物の心音を聴診器で聴く子ども=群馬県」
         「飼育しているウサギを写生する小学生たち」
        「獣医師会と連携・協力している自治体数の推移」2006年3月まで 中川美穂子さん調べ)


日本経済新聞(2007.8.29)

◆ 小中学の飼育動物 都獣医師会が治療◆ 〜品川区教委協定を締結


東京都品川区教育委員会は28日、都獣医師会の品川支部と動物の飼育に関する協定を締結したと発表した。区立の小中学校で飼っている動物の治療を獣医師会の医師が担うほか、生徒や教員に正しい飼育方法を教える。動物の健康管理を進めるとともに、子供にとって安全な飼育環境を整える。
 獣医師会は区内の小中学校で飼っているウサギ、ニワトリ、カメなどの治療を引き受けるほか、死んだ場合は引き取って埋葬する。獣医師は学校を訪問し、飼育現場などをみて教員を指導。児童・生徒にも正しい飼育方法について講義する。獣医師会は鳥インフルエンザなど動物から人に感染する危険がある病気の発生状況の情報も提供、子供の安全を守る。
 品川区によると現在、23区では獣医師会と学校訪問指導などを盛り込む協定を結ぶのは同区だけ。同区教育委員会は「獣医師からの命の大切さや思いやりの気持ちを子供たちに伝えたい」としている。


日本教育新聞 2007年7月16日夏休みの動物飼育

夏休みの動物飼育をどうするか
保護者の協力得て命の営みを理解させる
    中川美穂子 全国学校飼育動物獣医師連絡協議会主宰

 間もなく夏季休業。飼育動物の世話をどうするかに悩む学校が少なくないが、全国学校飼育動物獣医師連絡協議会を主宰する獣医の中川美穂子氏に、子どもや保護者への協力の依頼の仕方や、夏場での飼育舎の配慮事項などを聞いた。

 夏休みなどの長期休業の休日の世話も基本的には同じである。子どもには「人間は1日に3回食事を取っている。土曜日から月曜日の朝まで食事がなかったらどう思う。命には休みはないよ、君たちは動物たちが頼っている親なんだよ」と話し掛けてほしい。

 保護者に対しては「子どもに命の大切さを伝えるために学校で動物を飼育しているのだから、その大切さを子どもたちに言葉ではなくて行動で伝えるために、保護者も力を貸してほしい」と学校の教育活動への参加を訴えていただきたい。

 子どもは、親が自分の気に掛けている動物たちのために来てくれて、手間も心も掛けてくれていることを肌で実感する、このことの教育的な効果は大きい。

 ある小学校では、指導に手の掛かる子どもがいたが、学校のウサギが好きだったので、その子どもの保護者にも土日の世話のお手伝いをしてもらったところ、落ち着いた行動を取るように変わっていった。

 筑波大学附属小学校の先生は、保護者にアンケートで、教室で飼育している動物へのアレルギーの有無を含めて休日の世話ができる家庭について調べ、協力を依頼している。

 学校では条件の合う家庭に協力を依頼する予定だったが、保護者から逆に、子どものための飼育だから当番を決めて平等に家庭に持ち帰って、世話をさせるべきだと提案があったという。こうした保護者の姿勢があれば、動物飼育の教育的な効果も一層高まるだろう。

 また、夏休みや休業日に限らないが、飼育担当の教員を一部教員に押し付けて、他の教員は無視では良くない。

 ある学校では、それまで特定の動物好きな先生に任せきりだった飼育を、3または4学年を飼育学年にして担任が担当することにした。最初はしぶしぶやっていた教員もいたが、子どもと一緒に世話をしているうちに、動物飼育の大切さに気付いていった。

 夏場の動物の世話では熱と水に注意してほしい。飼育舎の床がコンクリートだと熱がこもって逃げ場がなくなってしまう。本来は飼育舎の上に落葉広葉樹があると、夏は涼しく、冬は暖かいなどのメリットがある。そういう環境にないところは、動物をケージに入れて、昇降口などに一時的に避難させた方がよい。これは暑いときだけでなく、湿気が多いときも同じである。基本は、人間と同じ生き物として扱うことである。

 また、水は絶対に切らさないようにしたい。これは夏場だけでなく普段でも必要なことだが、登校してきたら、飼育舎の水が切れていないかをチェックし、水を補充すること。これも人間が、朝起きたら、おしっこをしたり、水を補充したりするように、学校の動物についても、生命維持の基本は人間と変わらないとの感覚を子どもたちに染み込ませるためである。

 子ども、保護者、教職員が協力し合って、動物たちを愛情を込めて世話する体制にしていくには、校長の理解やリーダーシップが特に重要。各地の獣医師会などでも、教育委員会と連携して、学校をサポートしているので、困っていることがあれば、相談してほしい。

(中川美穂子 全国学校飼育動物獣医師連絡協議会主宰)


朝日新聞(東京版)朝刊 2007/06/15付け
【きょういく@東京】記事

<学校獣医師 命伝える〜飼育指導で自治体と進む連携>
§寄り添い児童の心養う§ 


ウサギやニワトリなどを飼っている小学校や幼稚園に出向き、動物との接し方や飼育方法を指導する獣医師の活動が盛んになってきた。「学校獣医師」とも呼ばれる。動物の世話が情操教育に効果的だとして、自治体が地元の獣医師会と連携し、動物の飼育指導を授業に組み込んだり、教員向けの研修を実施したりするケースもある。(片山健志)

 「頭をなでてあげて」「抱くときは前脚の間に下から手を入れて」

 西東京市立向台小学校。校内で飼っている3匹のウサギを囲み、同市獣医師会に所属する中川美穂子さん(61)はまず、4年生のお母さんたちに動物との接し方を指導した。 同校はウサギの世話を毎年4年生が交代で受け持つ。新4年生に飼育法や注意点を指導するのがこの日、中川さんが来校した目的だ。 もっと詳しく  


命の教育に生かすために 見直される 「小学校の動物たち」 毎日ペット新聞(2007年冬号)

校長先生のことば
 保護者の協力を得るのは、教育を説得して「飼育を始める」ことより簡単だった。
毎年 ふれあい教室をするのは、教員にとって研修になる。
 「最初は飼育に反対していた教員も、子供たちにどんどん優しい心が芽生えていく のを見て、動物飼育の効果を認識し始めました。今は動物を飼うことに難色を示す教 員は、一人もいません」

 他、大阪の事例と群馬県の対応 もっと詳しく


日本経済新聞(2007.1.13 夕刊)


動物飼育で優しい子  〜小学生「お年寄りに席譲る」〜  お茶の水大 調査で裏付け


 小学校で飼育する動物の世話を経験した子どもは、バスや電車でお年寄りに席を譲るなど思いやりの気持ちが強まることが13日、お茶の水女子大大学院の研究者のグループの調査でわかった。グループは「命の大切さと向き合う動物飼育が心の成長に好影響を与えることが裏付けられた」と分析。東京都文京区の同大で14日開く「全国学校飼育動物研究大会」で報告する。
 同大の無藤隆・客員教授(発達心理学)らの研究グループがまとめた。都内11校の小学4年生795人を2つのグループに分類。乗り物で高齢者と居合わせたときなど暮らしの様々な場面を想定し、自分の行動を「きっと譲る」「たぶん譲る」「譲らないかもしれない」「譲らない」の4つの選択肢から選ぶアンケートを実施した。
 いずれのグループも動物飼育していない2005年3月時点で意識を調べ、翌4月以降、飼育した6校(467人)と飼育しない5校(328人)に分類。1年後同じ質問を設定し、回答の変化を分析した。
 このほか「あまり親しくない友達にもノートを貸してあげる」「気持ちの落ち込んだ友達に電話したり、手紙を出す」などの設問の回答項目で、積極的に応じる度合いを4点満点で点数化した。
 統計解析の結果、「飼育した児童」の平均値は05年3月の「2・01」から06年3月には「2・10」に上昇。「飼育してない児童」は「1・98」から「1・97」と横ばいだった。
 調査を担当した同大大学院生(人間文化研究科)の中島由佳さんは「給餌や掃除など動物の世話をする効果は指摘されているが、心へのプラスの影響が裏付けられた形だ。飼育を取りやめる学校も増えているが、意義は大きい」と話している。

朝日新聞2007年01月23日

学校で動物飼育、教育効果あり 座席譲るなど社会性育む


 学校で動物を飼育した経験が、電車で高齢者に席を譲るなど子どもの社会性
を育む――。そんな傾向が、小学生を対象にした無藤隆・お茶の水女子大客員
教授らの調査で明らかになった。動物の飼育など「命の教育」には関心が高い
が、これまで効果を裏付けるデータはなかったという。

 調査は05〜06年、東京都内の4年生795人を対象に実施、ウサギやチ
ャボを学年で飼育している「学年飼育あり群」と、行っていない「学年飼育な
し群」に分け、調査開始時と1年後にアンケートをした。

 「社会的態度」をみるため「バスや電車でお年寄りやけが人に席を譲る」「
気持ちの落ち込んだ友達に電話したり手紙を出したりする」など10項目につ
いて質問。「きっとそうする」「する」「しないかもしれない」「しない」か
ら答えを選んでもらい、各段階に4〜1点をつけ、平均点を比べた。

 当初、「あり群」は2.01点、「なし群」は1.98だった。これが1年
後、「あり群」は2.10点に上昇。一方の「なし群」は1.97点に下がっ
た。家庭で動物飼育の経験がない児童に絞って1年後の点数をみると「あり群」
(2.17)と「なし群」(2.00)の差はさらに顕著だった。

 無藤教授は「動物飼育は子どもの精神的発達にいい影響が期待できる。学校
などはその効果に留意すべきだ」。鳥インフルエンザの発生などで飼育をやめ
る学校もあるが「専門家の指導を受けて適切に飼う条件を整えることが必要」
と話す。

 日本獣医師会学校飼育動物委員会委員長の唐木英明・東大名誉教授は「経験
的に動物飼育の重要性は言われていたが、これまで客観的に検証したものがな
かった。この結果が学校教育で生かされれば」としている。

日本教育新聞 2007.1.22 

動物飼育で社会性向上
お茶の水女子大グループ 東京の小学生を調査


 学校での動物飼育を体験した小学校4年生と体験しなかった4年生を比べたところ、1年後には、前者はバスなどでお年寄りなどに席を譲るなど、思いやりの心や社会性が養われていることが14日、お茶の水女子大学大学院の研究グループの調査で分かった。動物飼育が他者を思いやる心や行動の育成に効果があることを実証した調査は少なく、注目される。
 調査は平成17年3月と1年後の18年3月に、東京都西東京市と小平市の小学校11校の4年生計795人を、ウサギやチャボなどを学年で飼育している群と、していない群に分けて、1年後の比較を行った。
 動物への共感性は「走っている馬が倒れたら悲しく感じる」など8項目、社会性は「バスや電車でお年寄りやけがをした人に席を譲る」など10項目について、「きっとそうする」を4点、「しない」を1点として4段階で点数化して平均点を比べた。
 その結果、学年飼育を体験しない子どもは、社会的な行動が1.98から1.97とやや低下していたが、体験した子どもは2.01から2.10へと有意に高まっていることが確認できた。特に、家庭での飼育体験のない子どもが学校で動物飼育をするケースで、社会性や思いやりの行動への意識が高まっていた(2.07→2.17)。
 調査に当たった同大大学院の中島由佳さんは「家庭での飼育経験がなくても学年飼育で他者を思いやる心などが成長することが明らかとなったのは意義深い。学校での動物飼育は減少する傾向があるが、子どもの精神的な発達を促す効果に留意してほしい」と話す。

日本経済新聞:広がる獣医師による教員研修 2006年11月10日付け

動物の飼い方 先生も学ぶ<「命の大切さ」研修広がる>
獣医師・自治体と協力


ウサギやニワトリなどの小学校で飼育されている動物の飼い方を教える教員向けの研修が広がっている。動物の特徴や正しい飼い方を知らないために世話ができず、「命の大切さの教育」がうまくいっていないのを見かねた地域の獣医師会が自治体と協力。すべての新任教員に研修を義務付ける自治体もある。

 「うわぁ、フカフカしてる」「鼓動が速い!」。ウサギを抱いたり、聴診器を当てた教員が声を上げた。先月17日、群馬県前橋市で行われた小学校の新任教員の研修会。同市の獣医師、桑原保光さん(51)による講義と実習が行われた。

 「片手で背中からつかんで持ち上げ、もう一つの手でしっかりおしりを支えて」とウサギの抱き方を指導すると、参加者は「怖がってるよ」「もっと安定させてあげたら」を言い合いながら学んでいた。

 桑原さんは動物飼育が子どもの成長に与える影響について講義。「子どもが動物をかわいがり、放っておけないと思えば、責任感が芽生えたり、命の大切さに気付く。動物と触れ合う機会を作ったり、生徒を褒めたりして、そういう気持ちに導くのが教師の役割」と力説した。

 伊勢崎市立広瀬小の溝口さやか教諭(25)は「勤務先の学校でもウサギを飼っているが、世話は飼育委員や担当の先生に任せきり。今日はウサギを抱いて心音を聞いたら、『守らなければ』と責任を感じた。生徒にもこういう思いを伝えたい」と話した。

この研修の狙いは、正しい飼い方を教えることに加え、動物を通じて何を子どもたちに伝えるのか、教員に自覚させることにある。同県総合教育センターの中村清志指導主事は「何のために学校で動物を飼うのかわかっていない先生も多い。『動物を通じて命の大切さを伝える』という目的を達成するには、すべての教員が目的と方法を理解して、子どもに手ほどきできるのが理想」と語る。

 群馬県では県内の公立小の9割以上がウサギや小鳥などを飼っており、今年度からすべての新任教員にこの研修を受けさせている。教員が飼育小屋をあまり見回らず、ウサギがケガをして耳がちぎれていたことに気が付かなかったり、去勢や避妊をしないせいで飼いきれないほど増えた動物がどんどん死んでいくなどの「目を覆いたくなる状況」(桑原さん)を見かね、県の獣医師会と県が協力し、実現させた。

希望者や飼育担当の教員を対象にした研修会は全国に広がっている。埼玉県は1993年度から教員向けの研修会を開始。2000年度からは学校へ出張し、飼育担当の教員と飼育委員の生徒に対して実地研修を行っている。

 栃木県は04年度から、県の獣医師会の協力を受け、夏休みを利用して県内の全公立小の飼育担当教員を対象に研修を始めた。長崎県や新潟市、奈良県なども、地域の獣医師会から講師を招き、研修会を実施している。
 一方、学校現場では動物飼育を巡って悩みもある。その一つが学校が週末や夏休みの対応。下校中の子どもを狙った犯罪が相次いだことなどから、以前は子どもたちが学校に来て餌を与えるなどの世話をしていた学校では、休日の登校には保護者同伴を義務付ける動きが出てきた。

 ウサギとウコッケイを飼育する東京都内のある小学校でも休日は子どもだけで登校させずに、「親子飼育」としてボランティアで世話をしてくれる保護者を募集している。「保護者にも意識は浸透している」(副校長)というが、日によっては集まらない時もあるという。その場合は教員が出てくることになる。

 中川美穂子・日本獣医師会学校飼育動物委員会副委員長は「土日や夏休みの世話は、子どもたちに命には“休み”がないことを理解させることになる。ただ、負担も大きいので保護者の理解と自治体の支援が欠かせない」と指摘。「他者を思いやる気持ちを育ててほしい」と話している。

<獣医師とまず信頼関係を>
 学校での動物飼育を成功させるためのカギの一つは、トラブルが起きた時、学校が専門家である獣医師に気軽に相談できる体制が整っているかどうか。

 日本獣医師会学校飼育動物委員会の調査によると、2006年6月現在、地域の獣医師会と、診療相談や定期訪問といった形で連携している自治体は23都道府県、9政令指定都市、121市区町村の計153。
 同委員会の担当者は「動物が病気になったりケガをした場合はもちろん、例えば『学校に動物が持ち込まれたが、飼育舎で飼ってもいいか』といった問題が起きた時、獣医師と気軽に相談できる信頼関係を育てることが大事」としている。



日本教育新聞(2006.9.11付記事 幼稚園・保育園面)
 

感性揺さぶる飼育体験に/日本小動物獣医師会が公開講座
羊毛から作品、家庭でも鈴虫の世話 / 当番活動で責任感


 「感性を揺さぶる飼育体験―動物の力を教育に」をテーマに、日本小動物獣医師会(松
林驍之介会長)の学校飼育動物市民公開講座が8月19日、京都市で開かれ、幼稚園現場か
らも動物飼育の実践事例が報告された。太平寺幼稚園の北口裕之理事長からはヒツジを飼
育したり、教室内でのウサギ飼育などに取り組み、羊毛を素材にフェルトや編み物に挑戦
し、保護者にも「ゲームを買うより、鈴虫を飼おう」と呼び掛けた。上賀茂幼稚園の加茂
麻由佳教諭は「当番活動を通して、命を育てることへの責任感が出てきた」と報告した。

 大阪・堺市の学校法人北口学園・太平寺幼稚園の北口裕之理事長は、獣医師でもあり、
園内でヒツジ(コリドール種)、ウサギ、カモ、ニワトリ、カメ、金魚、川魚、鈴虫、ザリ
ガニ、カブトムシなどを飼育してきた。ヒツジ(綿羊)は、餌代などの維持コストが比較
的安く、人畜共通の病気が少ない、おとなしく飼育や観察が容易、羊毛を園内の制作活動
などに活用できるなどの長所がある。
 同園では、2頭の雌のヒツジを年長児が当番を組んで世話をしている。初めのころは大き
なヒツジを怖がっていた園児も、普段から世話をする活動を積み重ねることで、「うんこが
汚い!」といっていた子どもも「きれいに掃除してあげよう」という気持ちが強くなって
いく。
 ウサギをケージに入れて教室内飼育をするようになってから、集団生活になじめない子
どもが教師と一緒に餌をあげることで、泣きやんでいろいろと話をするようになった。
 保護者にも変化があった。「ゲームを買うより、動物を飼いましょう」と園で育てた鈴虫
を家庭でも育ててもらうことで、親子のきずなが深まったほか、少子化の中でも入園希望
が増えるなど、動物飼育なども含めて豊かな心を育てるという園の考え方に賛同する保護
者が増えている。

 チャボの死 命の重さを知る

 京都市立上賀茂幼稚園では、園庭の一角に比較的広い小動物広場がある。広場にはトン
ネル付の石山があり、ウサギやチャボが生活している。年長児は1学期、動物が好きな子
どもと教師で掃除などをしていたが、興味のない子どもは「臭いからイヤ」と飼育小屋に
寄り付かなかった。そこで、掃除をしていた子どもを各グループに入るように編成し、掃
除の仕方などをほかの子どもに伝えるなど、当番活動の方法を工夫していった。
 当番活動を継続していくことで動物の気持ちになって考えたり、「チャボの口って小さい
から、餌も小さく切ってるの」とチャボに心を寄せて餌の用意をするようになった。鳥イ
ンフルエンザの時も教育委員会からの指示を受け、保護者や園児に説明しながら、動物か
ら遠ざけるのではなく、手洗いやうがいを徹底して世話活動を続けた。
 加茂教諭は「大切に世話をしていたチャボの死は命の重さを子どもたちが感じる機会に
なった。自由な場での動物とのかかわりとともに、飼育当番活動も、その中でどういう力
が育つのかを、明確にして援助していきたい」と話す。

専門家との協力体制を

 行政や現場から提言 / カリキュラム見直しも


 日本小動物獣医師会の市民公開講座では、講演や総合討論などで行政や現場、獣医師か
ら動物飼育の現状や課題について提案された。
 文部科学省の田村学・教科調査官は、小学校低学年の生活科で身に付いた力のトップは
「生き物への親しみ」であることを学会調査の結果などで紹介しつつ、「動物飼育の教育効
果を上げるには、地域の獣医師さんなどの専門家との連携・協力体制づくり、幼児教育と
連携して小学校の生活科・『総合的な学習』のカリキュラムを見直すこと、体験活動や気付
きの質を高める学習など学習活動の改善が課題になっている」と指摘。
 京都市立久我の杜小学校の寺田博幸校長は「子どもとともに大人も生き物に触れて命の
大切さを学べる体験の場が必要ではないか。京都市では、獣医師会と連携して教員の夏季
研修に生き物体験教室を実施してきた。飼育をすればよいというのではなく、それを教育
活動として意味があるように組織的に教材化するなど、管理職もこの点での力量を付けて
いくべき」と問題提起した。京都市獣医師会の和田茂雄理事は「獣医師会として、飼育マ
ニュアルづくりや授業ゲストティーチャー派遣など学校現場をサポートしてきた。ただ、
子どもたちの実態を知っているのは先生たち。ゲストでわれわれが参加するときは担任の
先生がリードしてほしい」と注文した。
 最後に唐木英明・東京大学名誉教授が「人間が生きていくために、自己保存に必要な恐
怖、種の保存に必要な愛着は欠かせない感情。特に愛着の感情はそれを呼び出す対象や練
習が必要で、動物はこの対象としてふさわしい。バーチャルな体験では愛着は育たない。
飼育体験が体験のままで終わることなく、学習につながるような方法を考えていきたい」
とした。


読売新聞(2006.9.9)群馬県  動物飼育 生かそう教育に

各小学校に「獣医師」指定 / 県教委 新人教師に「育て方」講座


 小学校での動物飼育を教育に生かし、命の大切さを学んでもらおうと、県教委は9月か
ら、県獣医師会と連携し、新たな取り組みを始めた。各校ごとに「学校獣医師」を指定し
るほか、10月からは新人教師の研修にも獣医師による動物飼育講座を取り入れる。

 県内の公立小学校では1998年度から、県の委託を受けた県獣医師会が獣医師を学校に派
遣し、飼育動物の診療や相談に応じる「動物ふれあい教室」を実施しており、2004年度に
は223校は実施した。
 しかし、同教室は学校によって実施回数が年1〜5回と差があり、派遣される獣医師もそ
の都度異なる場合が多く、「児童が気軽に相談することができない」との声が出ていた。ま
た、動物についての知識不足から、児童の質問に十分答えることができない教師も少なく
ないという。
 一方、県獣医師会側でも、「動物をただ飼育するのではなく、命の大切さを学ばせる機会
にするべき」と、総合的な学習の時間など教育課程に組み入れるよう県議会に陳情してい
た。
 こうした現状を受けて新たな取り組みを始めることにしたもので、「学校獣医師」は、公
立小学校全346校のうち254校で指定。獣医師会所属の約130人が1人当たり1〜8校を
担当し、場合によっては授業も行う。
 新人教師の研修は、今年度採用された83人全員が対象。10月と来年1月の2回に分け、
獣医師から、動物の適切な飼育方法や動物のとの触れ合い方などを学ぶ。
 県教委委員長職務代行者も務める桑原保光・県獣医師会学校動物愛護指導委員長は「特
定の獣医師が各学校とつながりを深めることで、児童にも獣医師の顔と名前が一致し、動
物もより身近に感じられるようになるはず」と期待している。


産経新聞−教育面(朝刊) 2006.2.20

増える学校獣医師
飼育や「命の学習」支援 

 学校のウサギや鶏たちの飼育を支援しようと、地域の獣医師が「学校獣医師」として学校にかかわるケースが増えている。命の大切さを学ぶ役割を担う動物だが、適切な管理ができなかったり、管理の大変さに困惑する学校もあるからだ。関係者は「子どもの発達に動物との触れ合い体験は重要。獣医師は専門家として、助言や支援をしたい」としている。

○ 生命を実感
前橋市立二ノ宮小学校で先月下旬、学校獣医師の指導の下、一年生の生活科の授業で「動物ふれあい教室」が行われた。同小の学校獣医師、川島勇夫さんが児童にウサギの特徴や抱き方などを説明した後、5、6人ずつ分かれたグループを川島さんと市内の学校獣医師計6人が受け持った。
 こわごわ抱っこする子や、触りたくてうずうずする子。聴診器で自分の心音を聞いた後、ウサギの心音を聞くと、口々に「速い」という声が上がった。最初は怖がっていた子も、獣医師の適切なリードで最後はしっかり抱っこ。授業の最後、千明未来ちゃん(六つ)が「(私たちとウサギと)生きてるところが同じ」と感想を話した。
 二之宮小ではウサギ4匹と鶏2羽を飼育しており、川島さんは相談にも乗る。飼育・栽培委員会担当の板橋浩子教諭は「ウサギの具合が悪いときなど丁寧に教えてくれ、便りにしている」。安斎秀樹校長は「専門家が話す命の大切さは説得力が違う」と話す。

○ 損得抜きで
動物を飼う学校は元々多かったが、平成3年に小学校の「生活科」のテーマに「飼育」が入ると拍車がかかった。
「しかし飼育環境は決していいとはいえず、具合が悪い動物の手当てをしないケースもあった」と全国学校飼育動物獣医師連絡協議会を主宰する東京都西東京市の獣医師、中川美穂子さんは話す。
協議会が活動を広げていった結果、自治体も学校と獣医師が連携する制度を作るようになった。群馬県は県獣医師会と協力し、平成10年度から学校獣医師制度を始めた。約160人の獣医師1人2校〜5校を担当する。
県、獣医師会で計2000万円以上の予算を計上しているが、報酬は「自分の病院で治療している方がもちろん多い」(桑原保光・県獣医師会学校動物愛護指導事業委員長)。病院の日程を調整する手間もかかるが、桑原さんは「損得でなく、専門家として教育に協力している。子どもに笑顔で『また来てね』と言われるとうれしい」と話す。

○ まだ少数派
中川さんによると、予算を付けて獣医師会と連携している自治体は、平成元年には一ヶ所しかなかったが昨年は112に増えた。それでも内訳は12県、9政令都市、91市区町村と少数派だ。中川さんは「まだ関心が低い」という。
 環境省の「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」でも、学校の飼育は獣医師など専門家の指導のもとで行うように明記された。今後も連携の必要性は増えるとみられる。
 「学校で動物を飼育することは命の大切さを学ばせるほか、相手を思いやる気持ち、感受性が育つし、思わぬハプニングに対処する力も養われる。そのような飼育教育の支援に獣医師がかかわれれば」と中川さんは話している。(小川記代子)




千葉日報 「開かれた学校で動物飼育」2005.3.16

耳よりナビゲー ター
開かれた学校で動物飼育 −地域の獣医師と連携を−


 生命尊重の教育に役立てようと、多くの小学校などでウサギやチャボを飼育しているが、実情は理念から程遠く劣悪な飼育環境に放置されがちだ。地域の獣医 師や保護者らと連携して現状改善を図る動きが出ている。
 東京都西東京市の向台小で、地元の獣医師・中川美穂子さん(お茶の水女子大学客員研究員)が、四年児童を対象に開いた「ふれあい授業」。
 中川さんはスライドを使って、生き物の習性から説明し始めた。チャボのつがいを撮った数枚の写真は、よく見るとどれも雄が手前に、雌が奥に写っている。 「卵を産んでくれる雌を、雄が守ろうとしているから。動物にも、お父さん、お母さんの感性があるんです」

 大きな音や長時間の接触で生き物に強いストレスを与えないよう注意喚起しながら、聴診器でウサギやチャボの心音を聴かせたり、適切な抱き方を指導した。
 学校での動物介在教育を地域の獣医師がサポートしていく活動を、長年リードしてきた中川さん。そのきっかけは、過密で不衛生な飼育環境のため弱ってし まった学校の動物を、小学生自身が診せにくるケースが相次ぎ、しかもその状況を学校側が把握していない実情を知ったためという。
 「いまでは全国で百以上の自治体が、学校と地元獣医師会の連携事業に取り組むようになった。獣医師が衛生面の助言をするだけでも状況は改善することがあ る。連携がまだの地域でも、積極的に声を上げてもらえば橋渡しに努めていきたい」・・・
 中川さんが事務局長を努める「全国学校飼育動物研究会」が、都内で開催した第一回研究発表会。土日や長期休暇中の動物の世話が話題に上った。金曜の放課 後、ウサギやチャボの飼育小屋にどっさり餌を置いて週明けまで放っておく。そんなずさんな事例が少なくないというのだ。 
 神奈川県鎌倉市の大船小の竜田校長は、保護者のボランティアを募って「飼育応援団」を組織、休日に親子で飼育小屋の清掃や餌やりに取り組む試みを紹介し た。
 同校でもやはりウサギなどが劣悪な環境で傷ついていたことから、保護者が飼育改善を要望したのがきっかけ。従来は飼育委員の児童が休日に学校に来て世話 していたが、周辺に不審者の出没が相次いだこともあり、2001年から休日には一、二家族の親子が交代で来るように決めた。
 「学校はとかく閉鎖的になりがちで、当初は教員も、飼育委員の児童たちも、親に口出しされたくないと反発していた」と竜田校長。
 「しかし保護者からの批判を率直に受け止め、獣医師にも日常的な助言を仰ぐことによって、飼育状況は大きく改善した。自分たちだけで抱え込まず、学校を 開くことによって、地域の目を学校に向けてもらうことにもつながったと思う」

【メモ】全国学校飼育動物獣医師連絡協議会のホームページ(http://www.vets.ne.jp/~school/pets)では、各地の】実践 例や鳥インフルエンザ対策などを紹介している。

平成17年2月11日(金) 日本教育新聞

    子どもが変わる!! 教師、獣医ら初の研究発表大会

 「子どもが変わる学校飼育動物」をテーマに1月30日、全国学校飼育動物研究会(会 長・宮下英雄 聖徳大学教授)が東京・文京区のお茶の水大学で初の研究大会を開き、学校関係者、獣医、学生、行政関係者ら約300人が参加した。休日の飼 育をフォローする保護者の飼育応援団が親子のきずなを深めるだけでなく、学校が地域に開かれる契機になった神奈川県鎌倉市の小学校や命の大切さへの思いを 共有した栃木県佐野市の小学校の事例などを報告。一方、獣医などの専門家のサポートや鳥インフルエンザへの対応など、連携の課題も指摘された。

 学校休業日の飼育動物の世話を、子どもだけでなく保護者も参加して行っている事例を報告したのは鎌倉市立大船小学校の竜田孝則校長。以前は飼育委員の子 どもたちが熱心にウサギや烏骨鶏(うこっけい)の世話をしていたが、不審者の出没などで夏休み中の飼育当番を子どもに任せることに不安があり、ボランティ アを募ることにした。自分たちの力でやりたいと、増えすぎたウサギを里子に出すことにも反対していた子どもたちだったが、「だれかの家で飼ってもらえた方 が幸せかなぁ」とのつぶやきがきっかけで、外部の力を借りて飼育環境を改善していくことになった。
 PTAの運営委員会で決まった「飼育応援団」には40近い家庭から応募があったという。土日の活動なので「これなら参加できる」という保護者や、子ども と一緒に動物と触れ合いたいというニーズもあり、父親なども参加する活動が始まった。
 こうした保護者のボランティア活動をきっかけに、「学校をきれいにし隊」「子どもの安全を見守り隊」などの学校支援のボランティア活動が次々と生まれて いったという。竜田孝則校長は「増えすぎたウサギへの対応などで獣医師のアドバイスが力になった。すべてを抱え込まずに、専門家や保護者の力を借りて、開 かれた学校づくりが必要」と話す。
 生活科や道徳の時間に学校飼育動物を素材に命の大切さの授業を行ったのは栃木県佐野市立船津川小学校の石島敦子教諭。獣医師が生活科の授業に参加するこ とで、ウサギの心臓の鼓動を聴診器で聴いたり、ウサギを怖がらせない接し方などを子どもたちは学ぶことができた。
 全児童37人という小規模校のため、同校では全児童が飼育活動に参加している。ウサギのために木の寝床を作ったり、低学年合同で「生き物にやさしい集 会」を開くなど、日常的な動物たちとの触れ合いの共通体験している子どもたち。命の大切さを学ぶ道徳の授業でも、頭だけでなく心と体で共通の思いを感じる ことにつながっているという。
 研究会では、鳥インフルエンザが発生したときにパニックにならずに、冷静に対応できた京都市などの事例を、同市獣医師会学校飼育動物対策委員長の和田茂 雄氏らが報告。緊急時だけでなく、学校飼育動物のサポートを教育委員会と獣医師会が組織的に対応できるように日常的な連携の大切さを訴えた。
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平成16年12月13日教育新聞記事

研究会第1回発表会案内 
 「子供達と動物たちのとのふれあい」
全国学校飼育動物研究会が来年1月に第1回研究発表会開く


 子供たちと動物とのふれあいを通して、生命尊重の心と豊かな情感を育もうと、教員と 獣医師が共に学ぶ「全国学校飼育動物研究会」が今年8月に発足したが、第1回研究発表大会を来年1月30日に東京・文京区のお茶の水女子大学で開く。

 現在、全国の約9割の小学校で動物飼育が行われているが、劣悪な環境の中で、必ずしも児童の健全育成の場にはなっていないとの指摘が多い。そこで、同研 究会では、教員と獣医師との連携を深め、動物飼育を通して、児童の健全育成と適切な飼育管理の在り方を考えていくことにしたもの。

 研究会は、宮下英雄聖徳大学人文学部児童学科教授を会長に、唐木英明日本獣医師会学校飼育動物委員会委員長(東大名誉教授)、中川美穂子全国学校飼育動 物研究会事務局長(獣医師)、無藤隆白梅学園短大学長らが運営委員会に名を連ねている。会員は約240人(うち約100人が教員)に達している。
 6年前からモルモットの教室内飼育を続けている筑波大附属小学校の森田和良教諭は「動物はリセットできない本物の生命、飼育に失敗すれば様々な傷を負 う。だからこそ子供たちは懸命に力を発揮する。また糞尿の始末や病気の手当、休日の世話など、手間のかかる作業を通して、自然と動物に情愛を通わせ、児童 に生き物への気遣いや“我慢する態度”が生まれてくる」と指摘した上で、「単に効率的な教材として飼育を導入するとうまくはいかない。人間の都合のよい 『モノ』ではなく、面倒がかかる生き物だからこそ、子供たちとの深いつながりが生まれる」などと語る。

 又、中川事務局長は「生き物を飼うには専門的な知識が不可欠。獣医師を学校に派遣して、飼育方法や公衆衛生についての導入授業を積極的に行っている。現 在、104の自治体が学校獣医師制度などの連携事業を実施しているが、支援内容には大きなバラツキがあり、地域の獣医師が継続的に支援できるような仕組み が求められる。特に、低学年の児童には、動物飼育は脳の発達や身体的なコミュニケーション能力の向上に大きな影響を与える」などと強調した。

 近年、生命尊重教育の意義の高まりから、学校での動物飼育が注目されているが、「教育的効果や効率を一律に求められないところに、飼育教育の本質がある のではないか。教員には、子共たちと動物の息の長いかかわりを忍耐強く見守り、支援していくことが求められている」との声も出ている。
 来年1月の第1回研究発表大会は、午前10時45分から午後4時半まで東京・文京区のお茶の水女子大学で「子どもが変わる学校飼育動物」をテーマに開か れる。中川事務局長が、「頭脳を育てる環境づくり」と題して基調講演するほか、佐藤暁子東京都新宿区立西戸山幼稚園長、竜田孝則神奈川県鎌倉市立大船小学 校長らが出席し、シンポジウムが行われる。参加費は500円。

 上に 戻る   学校飼育動物を考えるページ   全国学校飼育動物研究会

平成17年7月4日(月)付け  日本教育新聞

『動物飼育』
〜命の大切さ知り 思いやり育てる〜

<幼稚園・保育園>
* 東京・新宿区立西戸山幼稚園ほか
 ウサギやモルモット、小鳥やカメ、金魚やオタマジャクシ−幼稚園にはさまざまな小さな命がある。特に小動物との触れ合いは、命の誕生の喜びや死の悲しみに触れる貴重なチャンス。衛生面や直接触れられない子どもにも配慮しながら、教室内飼育や家族も協力した飼育の試みも広がっている。

「園便りで様子伝え 家庭とも協力」
  東京都新宿区にある区立西戸山幼稚園(熊谷宣子園長、園児74人)。高層住宅から通う園児が多い同園では、家庭で体験できない「小動物」の飼育を通して、豊かな心を育てる活動を教育課程で重視してきた。
  同園では、ウサギ、モルモット、ハムスター、小鳥、カメ、金魚などを飼育。また、新入園児がやってくる4月、池はオタマジャクシでいっぱいになり、年長児たちが器用にオタマジャクシを捕まえる姿を見て、入園間もない4歳児もすぐに幼稚園になじむようになる。ウサギと遊びたくて幼稚園にやってくる子どももいるほど。
  昨年度、同園の佐藤暁子園長(現新宿区立愛日幼稚園長)は、毎月の園便りで、子どもたちと生き物との触れ合いのエピソードを保護者や地域に伝えていった。入園当初、生きているウサギと縫いぐるみのウサギの区別がつかずに、かわいさのあまり強く抱きしめたり、自分の餌を食べてくれないと押さえつけて食べさせたりした園児も、教師が「ギュッとすると苦しくて嫌だよね」とウサギの気持ちを代弁しながら、園児たちに語り掛けることで、小さな動物の立場にたって考えたり、扱い方も慣れてきた。
  佐藤園長は「動物飼育は義務感や当番活動で無理にさせるのではなく、人も生き物も共に生きている、ということを実感させる機会にしたい。アトピー体質など、直接、生き物に触れない子どもも心の参加はできる。家庭と相談しながらかかわり方を工夫していきたい」と話す。
  横浜市にある三ツ沢幼稚園(寺山民江園長)では、ウサギ小屋で飼っていたウサギをゲージに移して、衛生面やアレルギーのある子どもへの配慮もしながら、より子どもの近くに動物を置くようにしたところ、「臭くてイヤ」という子どもも世話をする活動を続けることで、ふんの処理を早くしないと「ウサギがかわいそう」とウサギの気持ちになって考えるようになったという。

「接し方、大人が示す」
  幼稚園や学校での飼育動物の飼育に詳しい獣医師の中川美穂子さんは、幼稚園や保育所などで動物を飼う際の注意点として、(1)モルモットやゴールデンハムスター、チャボ、文鳥など、感情が見て取れるほ乳類や愛玩鳥が育てやすく効果も大きい(2)保護者の理解を得て休日の協力体制を作り、地域の獣医師などの専門家の支援を求める(3)4歳前半までは動物との接し方を大人が補佐して教える(4)動物の世話をすることで動物がどう思っているかを子どもに想像させる−などを挙げる。
  またアレルギー対策としては、動物をたくさん飼わずに換気と掃除をよくすること、動物の近くに行くとクシャミをしたり、目がかゆくなる子どもには接触させない、などの配慮が必要だ。
  こういう子どもでも、水替えや餌を持ってくる係など、直接動物に接しない仕事を頼むことができる。
  中川さんは、子どもが動物と初めて触れ合う場面では「怖がっているのは身体の小さな動物たちの方と子どもたちに話し掛けてほしい」と話す。
  なお、幼稚園などでの飼育活動の現場報告や獣医師らも参加して命の大切さを実感できる飼育の在り方をテーマとしたシンポジウム(全国学校飼育動物研究会主催)が8月27日午後1時から栃木県宇都宮市の栃木県総合文化センターで開かれる。
 

050731北九州での研修会

西日本新聞(2005/07/31付記事より)
<視点・論点>
動物と接し「命」学ぼう ― 獣医師会と行政 学校飼育で連携
北九州市 今春から支援事業
相談4件「浸透これから」


ウサギやニワトリ、ハムスターなど学校での動物飼育を通して、子どもたちは命の尊さや思いやりを学ぶとされてきたが、最近は、動物に接した経験がない教師や児童も増えている。そんな学校飼育を支援しようと、北九州市獣医師会(西間久高会長)は同市教委と連携して4月から「学校飼育動物支援事業」を始めた。ただ利用率はいまひとつ。九州各地でも広がりつつある、子どもと動物のふれあいをサポートするこの取り組みの現状を探った。 (北九州支社・中山憲康)

・ 導入以後4件のみ
 北九州市の支援事業では、市内40の動物病院が登録して、飼育相談や診察を受ける。各小学校には、市教委を通じて病院の連絡先と依頼用紙を配布した。
 6月上旬、市内の小学校から「春先からウサギが急増して対応に困っている」という相談が寄せられた。増えたのは、今年初め、飼育小屋の前に捨てられていたウサギ2匹を一緒に飼い始めたから。雄がいたため雌が次々に妊娠し元の2倍の約30匹となった。
 さっそく獣医師会で協議し、ウサギの雌雄を区別して分離。現在は避妊手術なども検討中だ。
 同市獣医師会の動物愛護委員会副委員長で学校飼育担当の吉岡宏さんは「数が増え過ぎると、衛生面など飼育環境が悪くなる。事前に相談があったら、先生や子どもにも適切なアドバイスができたのに」と残念がる。
 だが同制度の導入後、学校からの依頼数は、まだ四件だけ。「どうすれば、認知してもらえるのか」と吉岡さんは頭を悩ませている。

・ 訪問実績を重ねて
 支援事業が浸透しない点について、獣医師会と行政の連携に取り組む全国学校飼育動物獣医師連絡協議会主宰の中川美穂子さん(東京都)は「信頼関係を築くには、学校訪問の実績を重ねるしかない」と指摘。「現状では、北九州市教委が、獣医師会を学校に派遣することを認めたことに大きな意味がある。成果は今後に期待したい」という。
 日本小動物獣医師会によると、獣医師と連携する自治体数は1989年以降、関東を中心に年々増え、2004年には106に。県単位での連携もあるため、関係する市町村数でいえば730(当時)と全自治体の二割を超えている。
 この分野で先進県とされる群馬県では、学校現場での動物ふれあい授業に約1500万円の予算を組んでいるほか、1990年代前半から獣医師会との連携を進めた福岡市も、99年からは飼育指導や診察、治療費用として年間100万円の予算を計上。北九州市は予算措置まではしていないが「利用件数が増えた場合は、将来的には財政的な措置も検討したい」(同市教委指導部の中島由紀子指導主事)という。

・ 成長に果たす役割
 北九州市と獣医師会が27日に共同で開いた「学校の動物飼育講習会」には、同市立の小学校数(134校)を上回る役160人が参加。動物との触れ合いが、子どもたちに、命に対する尊厳の念を芽生えさせた他県の実例や動物の選定、数、正しい飼育法、感染症に対する対処法などを学んだ。
 福岡県も同様の講習会を管内の教育事務所ごとに近く実施する予定。佐賀県や熊本県など他県の行政職員の参加もあり、九州でも取り組みが広がりそうだ。
 映像ゲームやインターネットの普及でバーチャル(仮想現実)の世界が、小学生の間でも広がっている。吉岡さんは「だからこそ、本物の命に接する動物の飼育体験が子どもの成長に果たす役割が相対的に大きくなってきている。この取り組みをしっかり根付かせたい」と訴えている。

下野新聞  (平成17年8月28日付)

『心の教育に動物を』―宇都宮で市民講座―


 学校で飼育される動物と子どもの関係を見詰め直す「学校飼育動物市民公開講座」(日本小動物獣医師会主催)が27日、県総合文化センターで始まった。28日までの2日間の日程で、初日は教師や獣医師ら約300人が参加した。
 白梅学園大の無藤隆学長が「命の教育のための学校飼育のあり方」をテーマに講演。「子どもたちが自ら世話をするという体験が、責任感を養い、思いやりの心を育てる」と、動物と触れ合うことの重要性を訴えた。
 次いで、文教大教育学部の嶋野道弘教授が、小中学生の約一割が「死んだ人が生き返る」と答えた意識調査の結果を例に挙げ、「生身のものとかかわる体験は極めて重要」と指摘。「動物とのコミュニケーションを、いかにうまく支援できるかが優れた親、教師の役割」と呼び掛けた。
 28日は「気になる人と動物との関係」と題して有識者3人が講演。また映画を鑑賞するなどして身体障害者補助犬について考える。

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