10月8日 10:45 駿の先生から電話があった  「お母さん サフィが骨折した」

何時も恐れていた事だった

「すぐ行くから待っていて 見ないと決められないから」  そう言って準備をしている間にまた電話がかかった 11:03

「ショックを起したから間に合わないかもしれない 痙攣しているし 脚も硬直している」

「間に合わなくても行くからそのままにしていて 安楽死よりショックの方が楽かもしれないから  どちらにしても 行くまで待っていて 」

「お母さん 呼吸もおかしくなっている 聞こえる?」 先生が一生懸命サフィの呼吸を聞かせてくれる

普通の呼吸で無い事は聞こえる息から判る 

「先生サフィの耳に携帯を当ててくれる?」 麻衣子ちゃんが代わってくれて 何時も試合に間に合わない時のように耳に当ててくれた

「お母さん 耳に当てたから」 「サピタン 聞こえるかな? 今行くから待っていてね 大丈夫だからね 怖くないよ サピタン待っていてよ」

数分声をかけ麻衣子ちゃんに「サフィ 聞こえたかな?」と聞いたら 「聞いていたよ」と話してくれた

何しろすぐ出るから 待っていてとお願いして 出発した

途中で 高速に乗る前に赤信号の時に麻衣子ちゃんにメールを打った 「まだ生きていたら写真をお願いします 今練馬」11:45

12:10 麻衣子ちゃんからメールが来た 運転の合間に見たら サフィが立っている

バナミンを打っておいてとお願いした 

駿に着いて 「サフィは何処?」と聞くと声が聞こえたので サフィが嘶いて呼ぶ 

何時もはブヒブヒ怒るけど こんなに嘶くのは初めてだった

「今すぐ行くから じっとしていて 動いちゃ駄目よ」と大声で言い聞かせながら飛んで行った

サフィは嘶きながらブヒブヒこちらを呼ぶ 麻衣子ちゃんと飛んでいったらサフィが一筋の涙を流した

麻衣子ちゃんは吃驚して「先生サフィが泣いている」と言った

「サピタン駄目じゃない どうして怪我しちゃったの 大丈夫 痛いの診ようね」 サフィの涙は色々な気持ちを物語っている

「ママ ゴメンネ 動けないよ どうしちゃったのかな 大丈夫かな 」 色々な気持ちが伝わる

「サピタン 大丈夫 怖くないよ 脚を診せてね」 どんなにいじっても 頼ってくる 整復出来るかどうか 必死で試みたがどうしても無理と判る

急でレントゲンを持って来れなかったが 触ると中の様子が全て見えるように判る

中で骨がバラバラと動き 軋み 戻しても支える部分が無い  副木を当てたりしてくれていたが 重みで折れていた

小型でもぽっちゃりしているサフィは500キロまでは無いが それに近い

疲れてきて寄りかかってくる 脚も動くに動かせないから疲れがどんどん増している 

寄りかかってくると安定しないから転びそうになってしまう  排尿もしたいが出来ない

二人で居る時に サフィに色々話をした 怖がらせないよう 普通に落ち着くよう話しているうちに何時もの様子に戻ってきた

その時また一筋の涙を流した 先生に暗くなる前にしてあげないと サフィも可哀相だよと言われ

苦しむ様子は見えていたから決心して 最後を看取る事にした

サフィには最後まで痛いの治そうねと言っていた  普通の治療だと思ってもらいたかった

処置の先生が見えたとき 本能的に動けないサフィが一瞬怖がった 動けないのに45度逃げた

安心させる為にちょっと待ってもらって 「大丈夫だよ 痛いの取ろうね 治そうね」と良く話すと 安心してそれからは本当に静かだった

前処置で 横になってから処置を終るまで ずっと眼の中に私だけ映っていた

「大丈夫 大丈夫 痛いのとるだけね ママがずっと側に居るからね 怖い事ないからね 寝んねしようね」

顔をずっと撫ぜていて ずっと話していて きっと子守唄だと思ってくれたと思うほど静かな眠りだった 15:30

自分の無力を思い サフィに謝り 生きると言う事を選択出来なかった悲しさをまた新たに背負った


サフィとは老馬と老婆で暮らすのが夢だった   まだ後10年は一緒に暮らせると思っていた

事故はどうしても起きてしまう  どうしてそれが自分にと思ってしまうし でも他に起きて良いと言う事ではないから 起きてはいけない

起したくて起こるのではないから誰のせいでもない  でもどうして自分にと思ってしまう

サフィは もし手術を選んだとしても きっとこの後の事を乗り越える事は出来ないし それから生じる痛みを味わって行けないだろうと思う

大人になった大動物が骨折をした時に生きていける条件は限られている

サフィの骨は固定する場所を残していなかった  もう少し単純で 真ん中の方だったら、、、

それでも麻酔 覚醒 その後の治療に耐えられる体重では無いだろう

サフィとママのお互いの信頼を信じてくれて 最後を静かに眠ったサフィは 最後の親孝行を私にしてくれたのだと思う

目が覚めたら絶対元気になっていると信じてくれた 今 きっと何時も側に居てくれていると思う

サフィの死後数日過ぎたら ふと横に感じるサフィが居る きっと一緒に居てくれていると思う


サフィの最期を悲しい中 すぐ書いたのは 時間が経つと私の記憶が危なくなる年が近づいているからかもしれない

三歳から16年 でも一緒に居られた時間はほんの少ししかなかった

ただその時間の中身は ものすごく それこそものすごく 深く 濃い時間だったね

一瞬一秒が 一生にも値するほど 濃い時間だったね  私が行くまで皆と待っていてね


    

一人でたまたま音楽を聴いたとき、最後に私がサフィに言った言葉が聞こえてきた

さよなら ありがとう 好きだよ
泣くなよ バカだね
また会おう ごめんね 好きだよ
さよなら 怒んなよ
恋しい 苦しい いとしい
好きだよ 好きだよ

まるで私の言葉を歌ってくれているような気がして誰が歌っているのかと思って探したら

下にリンクした歌だった

僕は君に恋をする 平井堅 歌詞情報 - goo 音楽

僕は君に恋をする 平井堅 歌詞情報 - goo 音楽
ここで歌が聴けます
http://www.youtube.com/watch?v=98BvzXp4rt8


しばらくこの歌を聴くたびに泣いてしまうだろう