ピンク色した舌がちょっと見えますか?
歯が抜けてしまっている為のぞいてしまいます かなり年をとっていましたので(*^_^*)
住区便りに毎回このマークで区切った形で連載しておりました
実際の住区便りと内容が少し違うのはその時期に合わせてアラップとは関係の無い事を書いている時もありました。
本にする為にそういう部分は省きました。
これは本物の住区便りです
たくさん書き溜めて隙間が空くと適当に埋めて頂いていたので、住区便りの最後は「果報は寝て待て」のところで終っていました。
ぼくの名前は「アラップ」。生まれた国はトルコ 。
「アラップ」はトルコ語で「アラビア人」という意味だ・
ぼくの毛並みは、まるで黒い衣を着たアラビア人のように真っ黒。日本ではとってもめずらしいトルキッシュ・アンゴラという種類の、立派なねこなのだ。
ある日、トルコ大使に連れられて、日本へヒコーキで飛んできた。大使が日本で仕事をするためだ。
ぼくは東京にあるトルコ大使館の広い芝生で、毎日あそんだり、ひるねをしながら、とても幸せにくらしていた。
ところが、大使夫人に赤ちゃんができるというので、僕の運命は大きく変わってしまった。
大使夫人は赤ちゃんの世話がたいへんなので、ぼくをねこ好きの日本のお友達にあずけたのだ。
大使夫人のお友達はお花の先生をしているおばさんで、東京の郊外を流れている小さな川のそばの二階だての家に住んでいた。
その家のまわりには、トルコ大使館の庭より広い畠がたくさんあったので、遊びが大好きなぼくはすっかり気に入ってしまった。
でも、先生の家には白い大きなペルシャねこがいて、ぼくをいじめてばかりいた。なぜいじめるのだろうかと、いろいろ考えてみた。それは、ぼくが日本語をじょうずにしゃべれないからだと思った。
ぼくは、いじめられないように、食事のとき以外はほとんど家のなかに居なかった。いつも家から離れて、畠のなかで一日を過ごしていた。
ところがある日、お花の先生の家に大事件がおこった。
夜、ぼくが家のなかで寝ていると、急に変なにおいがしてきて、ぼくの鼻がぴくぴくと動き、ぼくは目を覚ましてしまった。
廊下にでてみたら、なんとお風呂場のほうから黒いけむりが吹き出しているではないか。そのうちに、火の粉が雨のように降ってきた。
ぼくはどうしたらいいのか迷っていたら、いじわるねこがあわてて外へ逃げ出していくのが見えた。ぼくは、いじわるねこと反対の方向へ飛び出した。
外に出て、畠のなかから家のほうを見たら、もう大きな火柱が吹き上げ、とてもちかよれない。ぼくはとてもこわいので、夢中で遠くへ走って逃げた。
火事は生まれて初めてなので、こわくてこわくて脚がふるえ、腰が抜けてしまった。やっとの思いで身をかくす場所をみつけ、そのまま二、三日、のまず食わずで過ごした。あんまりお腹がすいたので、目はかすむし、意識も薄らいでl来た。
と、そのとき、遠くのほうから女の人がぼくの名前を呼びながら近づいてくるではないか。
「アラップ、アラップ」
ぼくは気力をふりしぼって、なきながら居場所を知らせた。
「ニャー、ぼくはここにいるんだよ」
ぼくの声がきこえないのか、そのひとはぜんぜん気がつかない。この機会を逃がしたらたいへんだ。ぼくは満身の力をふりしぼってアナから飛びだした。
「アッ!」
女のひとは驚いて、ぼくをだきあげた。
「まぁ、かわいそうに、こんなにやせてしまって」
そういいながらほおずりをしてくれた。
ぼくの住んでいた立派な二階建ての家は全焼してしまい、不幸なことに、逃げ遅れたお花の先生は火事で亡くなってしまった。とても悲しい出来事だった。
その先生にはひとりのお嬢さんがいた。そのひとはあるうちの坊やのピアノの先生をしていた。
その坊やのお母さんはかず子さんといって、とてもやさしいひとだった。かず子さんはぼくがいなくなったことを、お嬢さんから聞いて、探してくれたのだ。
やせこけたぼくをひろいあげて、ほおずりしてくれたのは、そのかず子さんだった。
ぼくはかず子さんにだかれながら、ちかくの犬猫病院へ連れて行かれた。そして、ぼくはりっぱなケージにあずけられた。それをみとどけたかず子さんは、安心して帰っていった。
ところがなんと、そのケージのなかにはあの白いねこも居たんだ。いじわるねこは突然ぼくの耳にくらいついてきた。ぼくも夢中でいじわるねこの顔を引っかいた。それからがたいへん、ギャオー、ギャオーのおおげんかになった。
犬猫病院の先生はおどろいて、ぼくをとなりのケージは移してくれた。こまった先生はかず子さんとピアノの先生のお嬢さんに電話をして、いろいろ相談をしたらしい。まもなくかず子さんがやってきて、ぼくをだきあげてくれた。
「まあ、かわいそうに。耳を齧られているじゃない。あら、ここの毛も抜けている、、、。かわいそうに」
といって、ぼくをだきかかえながら犬猫病院の外に出た。どうやら、かず子さんのうちにあずけられるらしい。ぼくは嬉しくなった。すると、きゅうにお腹がすいてきた。
かず子さんのうちも、郊外の小さな川に沿ったところにあり、五階建てのマンションの三階にあった。ぼくは以前にいた大使館のうちを思い出した。でもこのマンションには大使館のように旗はひるがえっていなかった。
かず子さんのおうちにはピアノを習っている坊やと、そのおじいさんとおばあさんが住んでいた。
おうちではおじいさんのことをオーパパと呼び、おばあさんのことをオーマと呼んでいた。オーパパもオーマも、とても親切なひとで、ぼくをかわいがってくれた。
ぼくは、外出のときは、犬のように首輪とひもを付けられて、歩く。なぜかというと、ぼくはとても大きいし、ぼくが逃げると、あずかった人に悪いからだという。
マンションわきの小さい川の両端にはきれいな遊歩道があった。さくらやツツジが植えられ、ところどころにベンチも置かれている。
かず子さんの話によれば、さくらが満開になると、それはそれは美しい遊歩道になるそうだ。
遊歩道のずっとさきには女子学園があった。だから、朝と夕方にはおおぜいの女子高生がこの遊歩道を通る。
朝は、みんないそがしそうに、わきめもふらずに早足で通りすぎていくけど、、夕方はぺちゃくちゃおしべりをしながらゆっくりと歩いてくる。
三階のマンションには、せまいけれどもしゃれたベランダがあって、植木鉢がたくさん並んでいる。オーマは朝、洗濯物をそのベランダにほす。ぼくもいっしょにベランダへ出た。そこから、下を通る女子高生をながめた。そのうち、ぼくはどうしても遊歩道のところへ行きたくなった。
ある日かず子さんのうちのひとがみんな外出してしまった。留守だ。ぼくはなんとか三階からそとにおりられないものかと考えた。ガラス戸はみんなしまっているけど、あきらめないで、ベランダへ出るガラス戸を前足でこじって見た。すると、うんよく少し戸があいた。ぼくはスルリと身をかわし、ベランダに出た。
良く見たら、ベランダの目の前にシュロの木が立っている。50センチは離れているけど、ぼくは軽くジャンプをしてシュロの木にとびつき、スルスルと地面に下りることが出来た。
ぼくが遊歩道のくさむらにねころんで、通り過ぎるひとを眺めていると、女子高生のなかにはぼくの頭をやさしくなでていくひともいる。
「あーら、クロちゃん」
ぼくにはアラップというりっぱな名前があるのに、かってに名前をつけて呼ぶひともいる。それが楽しくて、夕方になるまで遊歩道のくさむらにねころんでいた。
外から帰ってきたオーマやオーパパは、ぼくがうちのなかにいないので、おおさわぎになった。
「アラップ!どこにいるの!」
いえのなかをすみからすみまで探しても見つからない。そのうち、ぼくは外にいるにちがいない、ということになった。
「アラップはどうやって外に出たのかねえ?」
「ベランダへ出るガラス戸がちょっと開いているわ」
「じゃあ、ベランダから下へ飛び降りたのかねえ」
「いくらトルコのねこでも、これじゃあ、高すぎないかしら」
そういいながら、オーマはベランダへ出て下を見た。そのときぼくは、そろそろ家へもどろうかとシュロの木の根元の近くのくさむらで休んでいた。
「オーパパ!オーパパ!きてごらんなさい!アラップが下にいますよ。はやく!」
ぼくはゆっくりと上を見上げてからシュロの木にとびつき、スルスルと登って見せた。
「まあ、なんて身軽なんでしょう!やっぱりシュロの木に飛びうつって下におりたのね、、、、、、」
オーマの興奮した声がぼくの耳に入ってきた。
それからというもの、オーマは玄関の脇にある小窓を少し開けて、ぼくがいつでも出入りできるようにしてくれた。これはとても嬉しかった。
オーパパは最近パソコンという便利な道具を買い込んで、夢中で指を動かしてはにこにこしている。オーパパのせつめいによると、あの小さな機械の中には何千何万という電子こびとがいて、キーをたたくとその小人たちがすごい速さで画面に漢字や数字や英語をだしてくれるのだそうだ。
その早いことといったら、ぼくがはしるよりもっと早いのだと、オーパパはいう。ぼくは黙って聞いていたけど、心の中では「ぼくより早いものなんかいるはずはない」と思っていた。
かず子さんのマンションはとてもいごこちがよいうえ、みんなやさしいので、ぼくは幸せな毎日をすごしていた。
ところが、半年くらいして、遊歩道もすっかり葉ざくらになったころ、ぼくは、ピアノの先生のうちへ引き取られることになった。ぼくは先生の真っ赤なフィアットに乗って、もといたうちへ帰った。
火事で焼けた家はすっかり新しく建てなおされていた。そして、あのいじわるねこも、もうちゃんと帰っていた。あいかわらずふきげんな態度でぼくをにらむけど、無視することにした。
毎日、新らしいきれいな部屋で寝ることはできたけど、ぼくの心はなぜか落ち着かなかった。
そして何ヶ月かがたった。どうも家のなかがおかしい。ぼくはわかった。頼りにしていたお嬢さんが、なんとお嫁にいってしまうのだ。
お嬢さんがいないうちなんかつまらない。いじわるねこもきにいらない。だから、ぼくは家のなかにいるより外のくさむらにいる時間が長くなった。
毎日くさむらで、あの親切なかず子さんや坊ややオーパパ、オーマと、また、いっしょにくらせたらいいのになあ、と思い続けていた。
あるとき、おおぜいの女子高生がにぎやかにおしゃべりをしながら、くさむらで休んでいるぼくのそばを通っていった。ぼくはそのときハッとした。
「そうだ!オーパパのうちの前でいつもぼくの頭をなでてくれたのはあの女子高生なんだ。ということは、オーパパのうちはこの道の先にあるのかもしれない」
そう気がついたぼくは、もう夢中でかけだした。みんなが歩いていくその先には、きっとあのオーマのマンションがあるに違いない。これは同じ遊歩道なんだ。
ぼくのカンはみごとに当った。やがて遊歩道の右側にあのなつかしいマンションが見えてきた。ぼくは女子高生たちをみんな追い越して、マンションめがけてダッシュした。
マンションの階段をいっきにかけ上がって、玄関のよこの小窓にとびあがった。ぼくがいるころは、いつでも自由に出入りができるように、ガラス戸がほんの少し開いていた。
おどろいたことに、あの時と同じようにガラス戸はほんの少し開いていた。きっとこれはオーマの心づかいだ。いつでもぼくが帰ってこられるようにと、あけておいたに違いない。
ぼくはスルリと身体をかわして部屋のなかへ飛び込んだ。
ホッとしながら家のなかをうかがうと、どうやら留守らしい。誰もいない。
ぼくは、なつかしいオーパパの部屋にもぐりこみ、オーパパがいつもすわっていたいすにのっかって休んでいた。そのうち、いつのまにか寝込んでしまった。
ドアの開く音で目がさめたぼくは、いすから飛び降りて玄関へすっ飛んでいった。かえってきたのはかず子さんだった。
「ニャーッ」
ぼくは元気よく鳴いてみた。
「ヒャーッ!アラップなの?いったいどうしてここにいるの?ひとりで帰ってきたの?良く帰ってきたわねえ」
かず子さんは、涙をこぼしながらぼくを抱き上げてくれた。
それからまもなく、オーパパもオーマも坊やも帰って来た。
みんなはぼくをこころから歓迎してくれた。
こうして、ぼくはまたこのマンションで暮らすことになった。
さて、ぼくの食事は、いつもオーマが面倒をみてくれる。でも、いつも同じ「キャットフード」ばかり。そろそろあきてきた。それに、お世辞にもそれほど美味しいものではない。悪いとは思いながら、いつも残してばかりいた。
その日、ぼくがマンションの近くを散歩していたら、近所の知らないおばさんがぼくを見て、
「まあ、かわいそうに、お腹が空いているんでしょう」
そういって、お皿のうえに魚をのせて出してくれた。ぼくは、見ず知らずのひとがくれる食物には手をださないしゅぎなんだけど、あんまりいい匂いなので、思わずちょっとかじってみた。
その美味しいこと!ぼくは夢中でいっきに食べてしまった。
こんなに美味しい魚が日本にあることを知らなかったなんて、とてもざんねんだった。
それからまもなく、オーマといっしょに近所のスーパーに買い物をしにいったときだ。なんとあの魚をくれたおばさんとばったり会ってしまった。
「あーら、このクロちゃん、おたくのねこでしたの。わたしはすっかり野良ねこだと思って、このあいだもナマリを上げたのよ。そしたら喜んで食べていたわ。この子ナマリが大好きなのよ」
これでオーマは、ぼくがナマリが大好きなことを知り、それから毎日ナマリをかってきてくれるようになった。ぼくは毎日ご馳走を食べられるようになった。
こんなぜいたくな毎日をおくっていいものだろうかと、時々ぼくは考え込んでしまう。
やがてお正月がやってきた。元旦は寒いあさだったけど、かず子さんと坊やは近所の氷川様におまいりに出かけていった。「はつもうで」と言うのだそうだ。僕は暖かいオーパパの部屋のソファで「初いねむり」。
オーマは朝からなぜかそわそわしていた。それは孫のチータンやヒデくんが両親と一緒に遠いところから訪ねてくるからだ。
その夜はとてもにぎやかだった。みんなでおとそを飲み、おぞうにを食べ、おせち料理を食べていた。みんなはおなかがいっぱいになると、今度はゲームを始めた。がやがやうるさいので、ぼくはそっと外に出て、冬の夜空を見上げていた。
お正月の二日目は、オーマの妹さん一家がはるばる九州から訪ねてきた。
「なん年ぶりかしらねえ、、、」
オーマと妹さんはうれしそうに、話に花を咲かせていた。でも、冬の日は短いものだ。夢中ではなしているうちに、日はとっぷり暮れ、妹さん一家の帰る時間がきてしまった。マンションを出るときオーマやかず子さんたちもいっしょに見送りに出た。ぼくもいっしょにマンションの階段をおりて外に出た。
オーマの妹さんご一家をかこみながらみんなは遊歩道をゆっくり駅のほうへと歩いていった。ぼくの真っ黒い身体は暗やみのなかにとけこんでしまうのか、みんなはぼくに気がつかない。
ぼくは途中でそっと遊歩道から外れて、なわばりを巡回してみようと思い立った。新年はじめての散歩だ。
以前に、ちらっと見かけたトラと呼ばれているのらねこが、どこまでぼくのなわばりを荒らし回っているか、気もなっていたからだ。
そののらねこは、トラとよばれるだけあってからだは大きく、しまもようもほんもののトラに似ていた。そして、ずうずうしいねこだった。
、ぼくは、遊歩道から右にそれて、駐車場を突っ切ってバスどおりに出ようとした。ときおりピューンと目の前をクルマがとんでいくけど、お正月の二日目は、いつもよりクルマの数はぐんと少なく静かなものだった。
ぼくはバスどおりの向こう側を注意深く眺め回した。するとどうだろう、あの、のらねこトラが向こう側からじっとぼくをにらんでいるではないか。沿道の植木野なかからふたrつの目が白く光っている。
ぼくも負けずとじっとにらみ返した。でも、トラは自分のほうが強いと思っているにちがいない。どうやらぼくのほうへ渡るチャンスをうかがっているようだ。ぼくをやっつけようと狙っているのだ。
これはたいへんだ。てをこまねいてまっていることはない、ぼくはそう思った。先に攻撃をかけるほうが勝つ。
ぼくは、トラに一発くらわせてやろうと、身をかがませて二、三歩バスどおりに足を運んだ。
そのとたんだった。ぼくは、鼻をガンとなぐられて数メートルほど跳ね飛ばされた。そして沿道にたっているいちょうの木に猛烈な勢いでぶつかってしまったのだ。
しまった!トラにやられたのか、いや、これは違うぞ。これはトラのいっぱつではなく、右側から走ってきたクルマに跳ねられたらしい。鼻から血がぽたぽたと流れ出した。
頭がボーっとしてきて体がいうことをきかない。早く家へ帰らなければたいへんだ。そう思って歩き始めようとするのだけど、手足がいうことをきかない。仕方がないので、ぼくはバスどおりの路面に横たわってしまった。
鼻から流れる血は止まらない。ぼくはだんだん眠くなってきた。
「しばらく休みことにしよう。そのうち、誰かがとおりかかって、ぼくを家へ抱いていってくれるだろう、果報は寝て待てだ、、、、、、」
どのくらい時間がたったのか。ふと気がつくと、だれが敷いてくれたのか、ぼくは分厚くてやわらかいじゅうたんのうえに横たわっていた。
たたみ一畳ぶんほどのそのじゅうたんは、ずっとむかしトルコにいたときによく見かけたじゅうたんとそっくりだ。
「そうだ、これはあのトルコ大使の部屋にあったじゅうたんだ」
ほくは、はっきりと思い出した。
思い出したとたん、不思議なことにそのじゅうたんがフワッと空中に浮き上がった。
ぼくはじっと横たわりながらうす目を開けてみた。じゅうたんから落ちないように身を乗り出して、下を眺めてみた。バスどおりのそばにかず子さんのマンションのビルが見えた。
冬の夜空は満点の星だった。下界は町の灯がとてもきれいに見えた。そして、いろんな夢を見た。
かず子さんがダンボールを抱えて、マンションのドアを開けてはいるところだった。坊やがダンボール箱の中をのぞきながら、涙ぐんでいた。
オーマとオーパパも涙ぐみながら、段ボール箱の中にある黒いものをしきりにさすっていた。ぼくは夢うつつに、なんだか背中をさすられているような気持ちがした。とてもいい気持ちだった。
どのくらい眠ってしまったのか、よく分からない。暖かな陽射しがぼくの身体に当って、ぼくはハッと目が覚めた。
じゅうたんの上にぼくは寝ていた。そっと周りを見回してみた。
そうだ、忘れもしない、ここはあのトルコ大使のいたむかしの部屋ではないか。
ぼくはじゅうたんに乗って、はるばる海を越え、生まれ故郷のトルコにもどっていたのだ。
完