獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-201401-249

Re2:老犬の肛門腺腫瘍について
投稿日 2014年10月9日(木)10時49分 投稿者 プロキオン

肛門腺腫とのことですが、肛門周囲腺腫という理解でよろしいのですよね。

私は、お二人の先生の意見が食い違っているとは、受け取れませんでした。なんとなれば、そのままにしておくよりは、腫瘍の切除を実施した方がよいのに決まっているからです。お二人の先生が危惧していらしゃるのは、13歳の黒ラブで心臓に問題があるということで麻酔をかけて良いのかと言う点だからです。
この一番考慮されなくてはならない点について、同意見ということになるとおもいます。

肛門周囲腺腫は男性ホルモンに依存していますので、単に切除しただけでは何度でも再発することになります。おしむらくは2年前の手術の際に去勢を同時実施していたらということになります。私もこの腫瘍に関しては去勢を勧めておりますが、納得されない飼い主さんも少なくありません、むしろ多いです。

>ここ数日腫瘍が赤く腫れてきていてとても困っています。

赤く腫れてというのであれば、まだステージとしては前の方でしょうね。良くあるのが一度は手術しない方針を選択されたはずの飼い主さんが、腫瘍がさらに大きくなって潰瘍を生じて出血がひどくなってから、「やはり何とかならないだろうか?」来院してくることです。
腫瘍の状態(患者の状態)がさらに悪くなってからの申し出ですから、獣医師側から申せばよけいにストレスとプレッシャーがかかる手術に望まなくてはならなくなってしまうわけです。

1軒目の病院は、ごくありきたりの意見を述べたにすぎません。ただし、麻酔の危険性はありますよとつけくわて。
2軒目の病院は、所謂「後医」ですから、飼い主さんの様子から飼い主さんの意向に配慮したであろう意見を述べたのであろうと私は推測しています。


>セカンドオピニオンした病院では麻酔したらすぐに死ぬと言われました。

この点が一番重要なので、患者を直接診察しないと軽々しく意見を言えないということになりますが、もしそうであれば、1軒目の先生は手術の提案はされておられないでしょう。考慮しなくてはならない危険性があるから、飼い主さんの決断が必要であるということなのではないでしょうか?
この点こそが最重要課題ですので、ネット診断に頼ってはならないと考えます。


>抗生物質を死ぬまで服用させて手術はしないというのが良いと言われました。

飼い主さんがそれでよければこの方針でよいのですが、私もこれさんざんやってきましたが、抗生物質で腫瘍が治るというか良くなることはありません。腫瘍が大きくなって潰瘍を呈して、細胞が崩れて出血が続くというステージは進行していくことになるはずです。
このステージが進行するからこそ、前述したように見ていられなくなって、一旦決めたはずの方針を翻して「何とならないか?」となるわけなのです。

このように書いていると私が手術を勧めているかのように受け取られるかもしれませんが、私はどちらの選択も勧める意図はありません。
抗生物質の投薬で飼い主さんが望んだ状態が維持できるという保証はないでしょうし余命もそれほど期待できませんし、また、手術に踏み切っても愛犬を失くすという結末もありえることです。どちらの選択をしたところで、どちらにもそれなりのも結末が存在しているわけです。
だからこそ、飼い主さんが決断しなくてはならないのです、他人では駄目なのです。

簡単に言ってしまえば、2つの選択肢の中どちらが「よりましな選択」たりえるかということですね。ただ、「よりましな」とういう考え方と言っても、それこそ生活環境・人生観・犬との密接さ等によって千差万別の回答となるはずですよね。
それでも、自らが「よりましな選択」として選んだのであれば、どのような選択や結末であろうと、右往左往することなく受け入れられるのではないかと思うのです。
私が伝えたいのは、最後のこの部分なのです。

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