獣医師広報板ニュース

意見交換掲示板過去発言No.0000-201401-283

Re2:雌猫の避妊(卵巣摘出)手術について
投稿日 2014年11月30日(日)12時09分 投稿者 プロキオン

>・新人の獣医師だった(何年もその病院にかかっていますが初めて見る若い先生でした)

新人であるか否かは関係ないように思います。ベテラン以外は手術してはいけないというのであれば、そのベテランが亡くなってしまえば、手術をできる人間はいなくなってしまうわけであって、そこには必ず技術の継承が必要になります。
初めての手術からベテランというのはいないわけであって、新人がメスを執るときには、それをフォローする人間がつくことになります。新人による縫合の上手下手を言っていることになるのでしょうが、フォローする立場の人間がそれで「可」としているレベルであれば、誰が執刀したとしても、それはその病院の手術として評価すべきです。

>・ゆるんだり、糸が長かった、切れたというのは医療ミスにはあたらないのか?

縫合糸が緩むというのは、私も吸収糸に多いように感じています。糸が滑らかですべり安いというのは良いのですが、その反面摩擦が少ないのか結び目をつくろうとした際にこちらの意図しているのよりも緩んでいるということがあります。当然、結びなおすことになります。
糸が長かったというのは、結び目の切り口の長さのことでしょうか? これは吸収糸であれば、短すぎれば逆に結び目がほどけてしまうというもっと恐ろしいことが起こる可能性が出てきてしまいますが。
糸が切れたということは、使用期限内であればあまり考えなくてもよいように思います。それぞれの縫合糸にそれぞれの保持期間と吸収に要する日にちの目安と言うものがありますから、それが遵守されているかぎり気にした事はありません。
それでも切れたという場合は、縫合糸をかけた患者側の組織が脆かったり浅かったりとか、糸を扱う際に無理な角度で無理な力で引っ張ったりという行為が必要です。

今回のように皮下で術部の組織が腫脹してしまったというケースで、もっとも想定されるのは、縫合糸に対して患者側の生体反応(免疫反応)が起きて、糸に過剰に反応が起きたのではないでしょうか?
これはしばしば見受けられる現象であって、そもそも吸収糸が生体の免疫反応によって攻撃分解されて吸収されて術部から無くなっていくように造られているからです。この免疫反応というのは、炎症反応ですから、程度の差はあれ、どの個体においてもおきています。
この反応が強ければ、傷口も腫れますし、糸も早く分解吸収されかねませんでの術創が癒合してくれる一定の期間は糸が傷を保持してくれるように、成分やコーティングが工夫されていることになります。
けれども、患者の方は生きている命であって、工業製品ではありません。工業製品である縫合糸の想定している範囲を超えている個体が存在していても不思議なこととは言えません。


>・包帯の巻き方がおかしい(歩いてはすぐこけていたので)

これはぐるぐる巻く包帯のことでしょうか? 私は患者が動物であれば、そのような包帯は使用しません。動物の動きに巻いた包帯がついていけないからです。戦時中に兵隊さんが下肢ゲートルを巻いていたのと同様の巻き方をしないとたちまちズルズルになってしまことでしょう。
一般的には、動物の体をスッポリと包んでしまうことになるストッキネット包帯とか伸縮具合がひじょうに都合の良いネット包帯のような動物の体の動きにフィットして緩むことのない製品を使用することになると思います。
ただ、包帯についてであれば、これは必ずしも付けなければならないというものでもありませんから、包帯に原因があったという判断には結びつかないように思います。
最初から使用しない先生もおりますし、私も対象が野良猫であれば使用しません。猫自身がこのようなものを気にするものなのですが、野良猫ではとくに人間の臭いや薬や病院の臭いがするものを気にする傾向があります。一定の期間が経過して役目が済んで除去できる猫であれば良いのですが、その機会のない野良猫が相手となりますと、むしろつけないほうが親切のように思えます。
それにこのような術創を覆う包帯というものは、傷口がついつい気になってしまう飼い主さんのためにあるという部分も少なからずあると考えていますので。

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