災害と動物掲示板過去発言No.0700-201103-96
英雄は必要ないと思う |
投稿日 2011年3月28日(月)11時32分 投稿者 プロキオン
英雄は必要ないと思います。マスコミも世間も、今回のような大規模の災害となると心温まる話や人の善意をことさら取り上げて、希望につなげようとします。それ自体は、悪いわけではありません。 でも、動物達の保護や救護となると、英雄として祭り上げられる人物が出てくる必要はありません。 テレビに映った犬がいる、どこそこに飼い主とはぐれてさまよっている犬がいるということが取り上げられがちです。では、それらの犬達以外には犬はいないのか? 否、むしろ話題にされない犬達の数の方がずっと多いはずです。そのような話題にもならない犬達の中には、すでに保護されてしまった犬達もいます。 被災であって、自らも被災した人達が、犬を保護してまわっています。各県の愛護センターにも、すでにそのような犬達が収容されていますし、被災地の動物病院に保護されている犬達もいます。これは、獣医師達のメーリングリストを通じて、私は知っていますし、じきに収容できなくなる犬達のための保護や収容先のために話し合いも進んでいます。 では、なぜ、そのような動きは表に出てこないのでしょうか? これはすでに神戸の救護活動のときから、「まず、人間が優先。人間に食べ物や水が行き渡らない段階で、動物の餌が豊富にあっては被害者感情を傷つけかねない。人間の避難所よりも、動物の救護所がりっぱであってよいわけではない。」という配慮がすでにあったからです。 人間よりも、動物が優先されていたら、今後、被災地において動物を救おうとする活動に反発が寄せられかねない、かえって、動物の救護の妨げになるということを考慮してのことでした。 神戸以後も災害は続きましたが、災害の規模や死傷者の数という点で、なんとか出来てきて、動物を伴った避難というのも世間に受け入れられるようになってきました。 しかし、今回は、あまりに広域であり、被害も大きすぎます。再び、神戸のときと同じ心配をしなくてはなりません。被災地の獣医師会や自治体職員も、声高に動物の救護の声を上げにくいのです。でも、活動を放置しているわけではありません、地道に保護活動は進行しているのです。 このような状況下では、あの犬、この犬と被災動物を指定しての救護要請は、私は控えて欲しいと考えています。彼らは被災者であって、充分な機動力をもっているわけではありません。まず、目の前にいる動物の保護から始まる事だと思います。能力以上の負担を課すわけにはいきません。 そして、このような状況を利用して、救護の看板となる動物を目指して現地に入る者達もいます。テレビに映った犬を保護したのは自分達だ、危険な原子炉の周囲にまで近づいて犬を保護してきました、と言えば、寄付金はそこに集まりやすくなる事でしょう。 でも、そのような犬達は救護が必要な犬全体の中で、どのくらいの比率となるのでしょうか? 被災地で保護される犬は数は、相当な数になるはずです。それが、ごく一部の犬達だけに集中して寄付金が集まるのであれば、善意の寄付が生きてこなくなります。善意の気持ちから発したお金であれば、広く大勢の犬達の為に役立てる必要があります。テレビにも映らない、話題にもならない犬達にまで善意が行き渡るためには、犬の保護で英雄は必要ないし、広告塔となる象徴的な犬が出てくる必要もないのです。 各県にレスキュー施設ができても、飼い主さんの生活が元に戻るまでには長期間を必要とすることでしょう。そして、また不幸にして飼い主さんが迎えにくることができないケースというのもあることでしょう。新たな飼い主さんを捜す活動も、その後にひかえていることでしょう。 テレビに映った犬であるとか、話題性のある犬とかの理由での飼い主希望であっても困ります。新たな飼い主さんが現れるチャンスは、犬にしてみれば平等であって欲しいと思うのではないでしょうか? さらに、忘れてならないことに、九州や中国地方などの震災から遠く離れた地では、今日も不用犬として処分されている犬達が存在していることです。決して、被災地の犬の方が貴重な命というわけではありません。 今、被災地で保護や救護に尽力されている獣医師や自治体職員にしてみれば、そういう点を充分に承知しているはずです。その上で、目の前に保護や救護を必要としている動物がいるからというのに過ぎません。自ら英雄になろうと考えているわけでないはずです。 これが英雄が必要ないという理由の一つです。
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