獣医師広報板ニュース

災害と動物掲示板過去発言No.0700-201104-22

ホットアトムとコールドアトム
投稿日 2011年4月4日(月)11時28分 投稿者 プロキオン

文字通り、「熱い原子核」と「冷たい原子核」を意味していますが、決して原子核がの温度が熱いとか低いとかではありません。うかつに触ると焼けどするよという危険を知らせる意味合いからです。

ホットアトムというと、線量に関係なく密封されていない原子核を言います。これは、密封されていないので、取り扱いを誤ると、飛散と汚染を引き起こす可能性が常にあります。線量として微量であっても、気づかずに(外部)被ばくしていたり、体内にとりこんでしまっていたり(内部被ばく)すると、気がついたときには取り返しのつかないこととなってしまっています。常に飛散や汚染に注意して扱わなくてはならない原子核であることを意味しています。ホットアトムに関しては、線量と汚染の双方の危険を考えないとなりません。

コールドアトムというのは、硝子やセラミック、金属などで密封された原子核ですから、放射性同位元素による汚染の心配はありません。注意しなくてはならないのは、密封している物質を通過してくる線量だけです。このような場合ですと、線源との間に遮蔽物を設ける事や線源との距離をとることで安全に利用することができます。大抵の放射性同位元素装備機器に装備されているものは、こちらになります。それでも機器の設置してある部屋に管理区域を設定して、放射線に関わる教育を受けた者だけが管理区域内に立ち入るように規定されています。
コールドはホットに対しての用語なのですが、肝心の密封に破損が生じていないかを常時確認することが求められています。

放射性同位元素を取り扱う事業者は、旧来は科学技術庁(現:文部科学省)に届出もしくは許可を得て放射性同位元素を使用することになりますが、密封された放射性同位元素が対象であれば、「特定装備機器の免許」か「第二種放射線取り扱い主任者免許」をもっている者がいないとなりません。密封されていない所謂ホットアトムを扱うとなると、「第一種放射線取り扱い主任者免許」が必要となります。
非密封放射性同位元素取り扱い施設となりますと、施設基準であれば消防法に定められた規定がありますし、窓も無い部屋でドラフトチャンバーの中で扱うこととなりますし、施設内の空気は常に陰圧であって、外へ漏れないようになっていますし、空気も特殊なフィルターを介してから排気されます。
非密封ホットアトムの管理区域があって、その外にコールドアトムの領域があって、そして外部と同等の領域があります。
実は、私も、非密封の管理区域から密封の管理区域へ出る際に、一度、測定器にひっかっかってしまった事があります。大体は着ている白衣に付着していますから、舞い上がらせないようにそっと脱いで、履物も脱いで、手を洗うことになります。それで、測定器にひっかからなければ、ここから出てよしになります。駄目なら、隣室のシャワーを頭から浴びることになります。これを繰り返してもOKとならないようなら、外へは出られません。
私が行った先は、日本原子力研究所の研修施設(基礎課程)でしたので、初めて放射線の取り扱いを学ぶ者が対象でした。「OKが出ないと、ずっとここで暮らすのですか?」と私が尋ねたら、教官の先生が笑って、「初心者の君達にそのような危ない核種は、使わせていないから。」と答えられました。要は、注意していても毎年、何名かは測定器にひっかかるわけであって、そんなときに、どのような処置をとるのかを知ることも教育の内ということなのです。想定内の事であって、折込済みなのです。
ただ、当然ながら、先生は、こうも付け加えられました。「ここの空気も直接外気へ放出されることはないし、君達が手を洗った水も地下のタンクに蓄えられて貯蔵される。その後、処理施設に運ばれて、放射性同位元素を吸着沈殿させて、その上澄みを正浄な水で希釈して安全なレベルにまで落としてから、外部に排出されることになる。それだけの手間をかけないと環境中に出すわけにはいかないのだよ。」と。

非密封の放射性同位元素を取り扱うには、「第一種」の免許を有した専門家がいることが放射線障害防止法の定めるところなのですが、つい先日までのことであれば、10年先のことは保証できなくても直ちに健康に障害が出る恐れはないであろうということもあり、水での洗浄も黙認ということでした。
しかし、そうも言ってられない事態も進行していたのです。それが、プルトニウムです。
プルトニウムは、人間の手によって生み出された超ウラン元素であって、ウラニウム(売ウラヌス:天王星)にネプツニウム(ネプチューン:海王星)をぶつけて、生み出された事から冥王星のプルトニウムと命名されたのだそうです。いくつかの種類がありますが、主なものはPu239であって、冷却保存する必要があり、その半減期は24000年であり、極めて毒性の強い放射性同位元素です。
核弾頭のほとんどが、プルトニウムを原料としているだけでなく、そのままの状態であっても取り扱いのむずかしい元素であって、これを取り扱うのは、「原子炉核燃料等取り扱い主任者」ということになります。
先日までの放射性同位元素であれば、体内被ばくがあったとしても、その対象者の体内を通過してくるだけのエネルギーを有しているとも考えられませんでしたので、二次被ばくという可能性は、殆ど考えなくても良い状態でした。
しかし、プルトニウムが検出されているとなると、話はガラッと変ります。どのくらいの範囲にどのくらいの量が飛散しているのかが、分からないと、うかつな事はいえないのではないかと思います。

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