鳥類掲示板過去発言No.1700-201808-58
Re2:カルガモのヒナ |
投稿日 2013年6月28日(金)11時01分 投稿者 プロキオン
日本小動物獣医師会が、「野生動物 ファーストエイド・ガイドブック」という冊子を会員向けに出しているのですが、その中に野生動物を保護した際の連絡先一覧が掲載されています。 岐阜県の場合ですと、チーママさんが紹介してくださっている「岐阜県庁6階 環境生活部自然環境保全課」が連絡先として掲載されています。 大抵の県において、「鳥獣センター」が設置されていて、そこが直接の業務を実施しているわけなのですが、連絡先がその鳥獣センターではなくて、県庁内の本課であるというケースでは、センターの規模があまり大きくないのかもしれませんね。 まあ、そう言っている私自身の県においても同様なので、私は直接鳥獣センターの電話番号を調べておいて、直に連絡を入れるようにしています。担当されている方に直接状況を伝えた方が断然話が早いし受け入れ状況も把握できますから。 なお、チーママさんに突っ込みを1点。カルガモは、「渡り」をしません。 「渡り」という行動は、鳥類における「氷河期のレリック(遺存物)」と言われています。本来の繁殖地が寒冷化するため、越冬を目的として暖かい南方へ移動することを指してそのように理解されています。 したがって、ツバメは日本で繁殖しますから、日本が本来の生息地ということになり、南へ渡って行き、初夏に日本へ帰ってくるということになります。白鳥やガン・カモの類は、シベリア方面から日本へ渡って来て、春に帰って行くということになります。 同様に日本で繁殖している猛禽類も初夏に日本に帰ってきて、秋に南へ渡って行くという日本の鳥です。ナベヅルやマナヅル等も越冬で日本に渡ってきますので、彼女らは日本のツルというよりは、お客様の立場と言えます。 そのような中でカモでありながら、カルガモは渡りをせずに日本国内において繁殖をするという珍しい鳥なのです。今の季節にカモの雛を見つけたのなら、それはカルガモか合鴨くらいしか考えられませんので、普通はカルガモの雛であろうということになります。 カルガモの雛というと、大手町から皇居のお堀への引越しが有名ですが、卵が孵化した場所は、とにかく捕食者の目に触れないが大前提です。その一方で雛達が大きくなってきますと、餌の量が間に合わなくなってきます。 たとえ、餌がまにあったとしても雛達が大人に成長していくためには、知らなくてはならない事、学ばなくてはならない事が多くあり、保護されるだけの場所では決して大人にはなれないのです。そのためにこそ、危険はあっても親鳥は、雛達を広い世間に連れて行って成長を促すのです。危険はあっても、自らの力で乗り越えていくことが、自然界で生きていくということに他なりません。 カルガモの引越しというと、私達はつい微笑ましいことと受け取ってしまいがちなのですが、あれこそが危険に立ち向かうための最初の試練なのでしょう。 親がどのように強く力があって、賢くても、その子供が一生を終えて寿命がつきるまで守ってあげる事は不可能です。親が守ってあげる事ができるうちに、子供に自分の力で生きていく術を身に付けさせる事が責務となるのです。 この季節において、目に付きがちな巣立ち雛を保護せずに、そのままにしておいて下さいと指導されるのは、親鳥の願いと雛の将来を奪わないためです。
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